- 陽圧換気は身体にどんな影響がある
- 人工呼吸器は身体にどんな影響がある?
このような疑問にお答えします。
この記事を読むと「人工呼吸器の生体に及ぼす影響」について理解することができます。
子どもを看る上での知識を発信しております。

この記事を読んでほしい方
- 人工呼吸について理解を深めたい方
- 陽圧呼吸の生体に与える影響を知りたい方
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自発呼吸と陽圧呼吸の違い
人工呼吸器管理を行うと換気が確保され、呼吸筋の仕事量を減らすことができます。
しかし陽圧呼吸は、自発呼吸とは異なった非生理的な換気方法です。
そのため生体に色々な影響を及ぼします。
そもそも自発呼吸と陽圧呼吸では何が違うのでしょうか?
自発呼吸
自発呼吸のポイント
- 自発呼吸は「陰圧」による呼吸
- 吸気時に横隔膜と肋間筋が収縮することで胸郭は拡張する
- 呼気時に横隔膜と肋間筋が弛緩し、胸腔内の陰圧が減少する
呼吸をすることを「肺を膨らませる」と言いますが、自分自身で肺を膨らませることはできません。
肺が収まっている胸郭を拡張して広げることによって、肺を膨らませることができます。
自発呼吸の吸気時は、肺が周囲から引っ張られて膨らみ、気道や肺胞内が陰圧となって吸気が起こります。
陽圧呼吸
陽圧呼吸のポイント
- 陽圧呼吸は肺胞、胸郭を強制的に膨らませる
- 胸腔内が陽圧になるため静脈還流が減少する
- 呼気時は自発呼吸と同様
陽圧呼吸では、人工呼吸器を使用して送気が行われます。
これによって肺胞を強制的に膨らませます。
肺が膨らむと胸郭も結果的に膨らむことになります。
このように人工呼吸時の吸気では、胸腔内圧が陽圧となり自発呼吸とは異なる動きをします。
胸腔内が陽圧になると静脈還流が減少し、生体にさまざまな影響を与えます。
人工呼吸器の生体に及ぼす影響
人工呼吸を行うと換気が確保され、呼吸筋の仕事量を減らすことができます。
しかし陽圧呼吸は自発呼吸とは異なった非生理的な換気法であるため、生体に影響を及ぼします。
挿管チューブ留置による影響
挿管チューブを留置することにより生体へ影響が起こります。
挿管チューブは、声帯を超えて挿入されるため上気道を塞いでしまいます。
そのため本来であると上気道で行われる加湿・加温が行われなくなります。
そうすると本来備わっている痰や微生物を排出する機能が低下してしまいます。
さらに人工呼吸で使用される医療ガスは、低温・乾燥状態にあるため、気道粘液の乾燥は促進され、固着・貯留して感染や気道閉塞をきたす要因にもなります。
換気条件設定による影響
自発呼吸では、以下のものは自動調整されています。
- 呼吸数
- 呼吸リズム
- 一回換気量
- 吸気時間
- 呼気時間
人工呼吸器の場合は、換気様式や換気条件を設定しています。
これらを完全に一致させること(患者の呼吸に同調)は、容易ではありません。
人工呼吸器の設定条件によっては、患者に苦痛を与える可能性もあることを意識しましょう。
換気分布への影響
自発呼吸と陽圧呼吸では、横隔膜の動きも異なります。

自発呼吸では、横隔膜の動きによって換気分布と血流分布のバランスをうまく取っています。
一方で陽圧呼吸は、人工呼吸器によって送気されるため、横隔膜に腹腔内からかかる圧抵抗の少ない腹側に多く流入し、血流の少ないところが多く換気されないことになります。
要するに仰臥位では、陽圧呼吸の方が換気血流分布の不均等は増強されます。
陽圧をかけることによる影響
人工呼吸器を用いた陽圧換気では、胸腔内が陽圧となります。
そのため、血液循環系や脳神経系、肝・腎臓などの主要臓器に影響を及ぼします。
また二次的障害としてストレス障害も起こる可能性があります。
血液循環への影響
陽圧呼吸では、胸腔内圧が自発呼吸の時よりも上昇し静脈還流が減少します。
その結果、以下のように血液循環へ影響を与えます。
- 心拍出量が減少する
- 心臓の拡張機能が障害される
- 肺血管抵抗が増加し、右心の後負荷が増加する
右心系への影響
右心系への影響について考えてみましょう。
- 前負荷の減少
陽圧換気により胸腔内圧が上昇し、静脈還流が減少して右室へ充満する血液量が減少します。
吸気時間を延長する設定では、より静脈還流が減少することになります。
- 後負荷の増大
PEEPにより肺胞内圧が上昇し、肺血管抵抗は増大します。
肺血管抵抗が増大することで、左室への血液の充満を阻害し、心拍出量を減少させます。
右室の後負荷の上昇は、右室肥大をもたらし、心臓の収縮力を低下させます。
左心系への影響
次に左心系への影響を考えてみましょう。
- 後負荷の減少
陽圧換気により胸腔内圧が上昇し、全身へ血液が駆出されやすい状態となります。
しかし後負荷の減少は血圧低下も意味しており、肝臓や腎臓など重要臓器への血流が減少してしまいます。
脳圧への影響
胸腔内圧の上昇に伴い、静脈還流が低下します。
その影響で頭蓋内圧の血液量が増加し、頭蓋内圧が上昇します。

腎機能への影響
- 尿量の減少
- 体液貯留
腎臓への影響は、上記のものになります。
心拍出量が減少すると腎血流は減少し、ナトリウムの再吸収が増加します。
また静脈還流の減少により右心房の充満が抑制されると抗利尿ホルモンの分泌が増加し、心房性ナトリウム利尿ペプチドの分泌は減少します。
心拍出量の減少により交感神経系が活性化し、レニンアンギオテンシン系が活性化します。
こられは、全て利尿を減少させることに繋がります。
肝臓への影響
心拍出量低下に伴い、門脈血流が低下します。
したがって、肝機能の低下にも繋がります。
精神面への影響
陽圧換気を行うことにより生体は必ずストレスを受けています。
疾患に伴う侵襲に加えて、睡眠障害、人工呼吸器とのファイティングなどがストレスの原因となって生じる二次的障害のことをストレス障害と言います。
二次的障害に注意し、生活環境を整え、適切な鎮静・鎮痛が行われているか評価することも大切です。
まとめ
人工呼吸器の患者さんを見る上で生体への影響はとても大切なポイントです。
- 自発呼吸と陽圧呼吸の違いを理解する
- 陽圧呼吸は生体へ影響を及ぼす
しっかり理解した上で臨床に取り組みましょう!
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