集中治療

人工呼吸器の生体に及ぼす影響

こんにちは。
小児集中治療室に勤務する看護師のpi ✿︎(@shinkan0607) です。
子どもを看る上での知識を発信しております。

 

人工呼吸を行うと換気が確保され呼吸筋の仕事量を減らすことができます。

 

しかし、陽圧呼吸は自発呼吸とは異なった非生理的な換気方法であるため、生体に色々な影響を及ぼします。



自発呼吸と陽圧呼吸

そもそも自発呼吸と陽圧呼吸では何が違うのでしょうか?

自発呼吸と陽圧呼吸では、換気のメカニズムが異なっています。

 

自発呼吸

自発呼吸の吸気時には、胸郭が拡張して胸腔内の陰圧(-6~8cmH2O)が大きくなり、肺が周囲から引っ張られて膨らみ気道内や肺胞内が陰圧となって吸気ガスが肺胞まで吸入されます。

胸郭の拡張には、横隔膜の収縮(下に引っ張られる状態)と肋間筋の収縮(胸が膨らむ状態)が関与しています。

コンプライアンスの低下や気道抵抗の増加により吸気仕事量は増加し、補助呼吸筋も仕事をするようになります。

ココがポイント

  • 自発呼吸は、「陰圧」による呼吸
  • 吸気時は、横隔膜と肋間筋が収縮することで胸郭は拡張する
  • 呼気時は、横隔膜と肋間筋が弛緩して胸腔内の陰圧が減少する

 

陽圧呼吸

陽圧呼吸では、人工呼吸器で設定した量あるいは圧になるまで、気管チューブを経由して送気が行われ、肺胞を強制的に膨らませます。

肺が膨らむため、胸郭も結果的に膨らむことになります。

このため、人工呼吸時の吸気では、胸腔内圧が陽圧に転じる部分が生じます。

胸腔内が陽圧になると静脈還流が減少し、生体にさまざまな影響を与えます。

呼気時には自発呼吸と同様に肺と胸郭の弾性により肺が収縮し、呼気が起こります。

ココがポイント

  • 陽圧呼吸は肺胞、胸郭を強制的に膨らませる
  • 胸腔内が陽圧になるため静脈還流が減少する
  • 呼気時は自発呼吸と同様



人工呼吸器の生体に及ぼす影響

人工呼吸を行うと換気が確保され、呼吸筋の仕事量を減らすことができます。

しかし、陽圧呼吸は自発呼吸とは異なった非生理的な換気法であるため、生体にはさまざまな影響を及ぼすことになります。

 

挿管チューブ留置による影響

気管挿管などの人工気道の留置により様々な苦痛を患者に与えてしまいます。

人工呼吸器関連肺炎も重要な合併症の一つです。

挿管チューブは、声帯を超えて挿入されるため上気道を完全にバイパスします。

そのため、本来上気道で行われる加温・加湿が行われなくなります。

上気道での加温・加湿が行われなくなることで気道粘膜上皮の繊毛運動が低下し、気道粘液の粘稠性が増します。

そのため痰や微生物など排出機能が低下してしまいます。

さらに人工呼吸における中央配管からの医療ガスは、低温・乾燥状態にあるため、直接吸入すると気道粘液の乾燥は促進され、固着・貯留して感染や気道閉塞をきたす要因となります。

 

換気条件設定による影響

自発呼吸では、呼吸数・呼吸リズム・一回換気量・吸気時間・呼気時間などは自動調整されており、それぞれ一呼吸ごとに異なっています。

 

そのため人工呼吸の換気様式や換気条件をこれらと完全に合致(患者の呼吸に同調)させることは容易ではありません。

 

血液ガス値(PaO2,PaCO2,pH)も換気条件によって左右されます。

換気様式や換気条件設定は、患者に苦痛を与えるものともなり得ることを意識しましょう。

 

換気分布への影響

仰臥位の場合、横隔膜の動きは自発呼吸と陽圧呼吸で異なってきます。

横隔膜は自発呼吸の呼気終末には弛緩しており、仰臥位では腹側より背側の方が腹腔内臓の重みを大きく受けて胸腔側に盛り上がった形をしています。

吸気時には横隔膜が収縮しますが、腹側より背側の方が大きく動き、結果としては吸気ガスは背側に多く流入します。

肺内血流分布は肺側に多いため、自発呼吸時は換気分布と血流分布のバランスがうまく取れます。

陽圧呼吸時には、吸気は横隔膜の収縮ではなく人工呼吸器による陽圧によって送り込まれるため、横隔膜に腹腔内からかかる圧抵抗の少ない腹側に多く流入し、血流の少ないところが多く換気されないことになります。

仰臥位では陽圧呼吸の方が換気血流分布の不均等は増強されます。

 

酸塩基平衡異常による影響

呼吸性アシドーシス、呼吸性アルカローシスは生体に多大の影響を与えます。



陽圧をかけることによる影響

機械的陽圧換気では胸腔内が陽圧となり、血液循環系や脳神経系、肝・腎臓などの主要臓器に影響を及ぼします。

また、二次的障害としてストレス障害も見逃すことはできません。

 

人工呼吸器関連肺障害

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)など重症呼吸不全に対する人工呼吸中に問題となります。

 

血液循環への影響

自発呼吸では、吸気時に胸腔内陰圧が大きくなり、右心房圧が下がって静脈還流が増大し、右心室の拡張末期容積が増大して右心室からの血液拍出量が増加します。

結果として左心室からの心拍出量も増加します。

陽圧呼吸では、胸腔内が自発呼吸時より上昇し静脈還流が減少して心拍出量は減少します。

胸腔内圧上昇により心臓が圧迫され、拡張が障害されることも原因となります。

肺胞内圧が上昇すると肺毛細血管が圧迫されて肺血管抵抗が増加し、右心の後負荷が増加して心拍出量は減少します。

 

右心系への影響

  • 前負荷の減少

機械的陽圧換気により、胸腔内圧が上昇し、静脈還流が減少して右室へ充満する血液量が減少します。

吸気時間を延長する設定では、より静脈還流が減少することになります。

これは機械的陽圧呼吸では、吸気時に胸腔内圧が上昇し、静脈還流が減少するためです。

  • 後負荷の増大

PEEPにより肺胞内圧が上昇し、肺血管抵抗は増大します。

肺血管抵抗の増大は、左室への血液の充満を阻害し、心拍出量を減少させます。

右室の後負荷の上昇は、右室肥大をもたらし、心臓の壁運動を低下させます。

 

左心系への影響

  • 後負荷の減少

機械的陽圧換気により胸腔内圧が上昇し、全身へ血液が駆出されやすい状態となります。

しかし、後負荷の減少は血圧低下を意味するため、肝臓や腎臓など重要臓器への血流が減少してしまいます。

 

脳圧への影響

胸腔内圧の上昇に伴い、静脈還流が低下します。

そのため頭蓋内の血液量が増加し、頭蓋内圧が上昇します。

実際には、特に問題にならないと言われています。( 頭蓋内圧が亢進している症例を除く )

 

腎機能への影響

陽圧呼吸により尿量は減少し、体液は貯留傾向となります。

心拍出量の減少により腎血流は減少し、腎内血流分布も変化し、ナトリウムの再吸収が増加します。

静脈還流の減少により右心房の充満が抑制されると抗利尿ホルモンの分泌が増加し、心房性ナトリウム利尿ペプチドの分泌は減少します。

心拍出量の減少により交感神経系が活性化し、レニンアンギオテンシン系が活性化します。

こられは、全て利尿を減少させることとなります。

 

肝臓への影響

胸腔内圧上昇に伴う心拍出量低下は、門脈血流を低下させ、肝機能低下をもたらします。

 

精神面への影響

陽圧換気により生体は、少なからずストレスを受けます。

ストレス障害は、疾患に伴う侵襲に加えて、睡眠障害、人工呼吸器とのファイティングなどが原因となって生じる二次的障害です。

この二次的障害に注意し、生活環境を整えることや適切な鎮静・鎮痛が行われているかを評価することも大切となります。



まとめ

人工呼吸器は、クリティカルケアにおいてなくてはならないものです。

使用している患者様が多いことも事実ですよね。

人工呼吸器による生体への影響も理解して臨床に取り組みましょう。

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