こんにちは。
小児集中治療室に勤務する看護師のpi ✿︎(@shinkan0607) です。
子どもを看る上での知識を発信しております。
小児患者をみていく上では「脳神経系」の評価も重要となってきます。
自分で訴えることのできない子どもたちの、何に注意して見ていけば良いでしょうか?
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中枢神経と末梢神経
神経系は、中枢神経と末梢神経から構成されています。
中枢神経は、大脳・間脳・脳幹・小脳・脊髄のことを指しています。
対して末梢神経は、脳神経・脊髄神経・自律神経を指しています。
中枢神経系の働きは、得た情報を分析・判断し指令を出すこと、身体機能の調整をすることです。具体的には以下のような役割があります。
中枢神経系は、人としての活動や生命維持にとっての要であると同時に、脳神経系自体も循環・呼吸によって維持されているという側面がります。
さらに詳しく
脳神経系の状態を把握することは、脳神経系の疾患の有無だけでなく、
生命の危機的状態の早期発見などの意義があります。
脳・神経系のアセスメントの意義
脳神経系のアセスメントは、中枢神経系の働きが滞りなく行われていることを評価するということです。
しかし、患者が物事をどのように知覚しているのか、どのように判断して指令を出しているのかは脳内のことであり、目に見えるわけではありません。
子どもから表出される反応より異常を察知する必要があり、脳神経のアセスメントの難しさはこの点にあります。
小児の場合は、さらに小児であるが故の困難さも生じてしまいます。
乳幼児では、「痛い、苦しい、気持ち悪い、寂しい、怖い、側にいてほしい」などの様々な感情を「泣くこと」や「いや」「痛い」などと言った同一の言葉で表現することがあります。
また、子どもは成長発達段階であることから、今まで出来ていた機能が障害されているのか、元々機能が未確立なのかが不明確なため、異常が早期発見しにくい場合もあります。
入院時の反応で判断が難しい場合は、普段の様子や児が今までできていたことなどを家族から聞き出し、観察していく必要があります。
ココがポイント
低年齢の児は、人見知りや状況が理解できない恐怖心から第三者との関わりを嫌がる場合もあるので反応には注意しましょう。
子どもの変化は、ご両親が一番気付きやすいです。「いつもと何か違う」という感覚も含めて評価しましょう。
脳神経系の評価をする指標
臨床で患者さんの脳神経系を評価するにはどういった点に注目すれば良いでしょうか?
意識障害
脳神経系は意識を維持する役割を担っているため、脳神経系の異常を疑う際には意識レベルの確認が重要となります。
意識とは、覚醒していて自分を正しく認識することができ、様々な刺激に対して的確に反応できる状態のことです。
意識を保つために必要なものは、大脳皮質・間脳・脳幹になります。
これらの働きにより覚醒と認知機能が保たれ意識は維持されています。
もう一つ大事な点ですが、意識を維持するのに必要な部位に脳幹があります。
この脳幹は、呼吸・循環の調整に関与しており、生命維持にとって重要な働きをしています。
そのため意識障害が生じるということは、患者の生命の危機的状況を示唆している場合があることが多いです。
意識評価のスケール
意識障害を客観的に評価するためには、スケールを使用しています。
具体的には、JCS とGCSが使用されてることが多いです。
JCS:japan coma scale
JCSはすばやく大まかに状況を判断するのに適しており、判定者によってズレが起こりにくいという利点があります。
しかし、一方で詳細な判定はできません。
GCS : glasgow coma scale
GCSは細かく丁寧に観察することができ、経時的変化を把握しやすいですが、判定者によって評価にバラつきが生じることがあります。
また、言語反応と運動反応は最も良い状態をスコアリングすることに注意が必要です。
意識障害が出現したり悪化した場合には、スケール評価と共に他のバイタルサインを把握し、異常の早期発見に努めるようにしましょう。
反射・姿勢・運動障害など
原始反射は脊髄および脳幹に反射中枢を持ち、胎生5~6ヶ月より発達します。
出生児に脳の損傷が起こると原始反射が消失せずに残存したり、後天的な中枢神経系の障害により原始反射やそれに似た反応が出現しやすくなります。
意識障害の患者に痛み刺激を加えた際には、特異的な姿勢をとることがあります。
除皮質硬直の場合は、大脳皮質の広範囲な障害によって起こり、上肢は屈曲し、下肢は進展します。
除脳硬直の場合は、中脳・橋(脳幹)の障害が起こり、上下肢共に伸展します。
小児では自らの異常を訴えることが難しく、低年齢であるほど日常生活の多くを周囲の人に依存しています。
そのため、麻痺や運動障害の発見が遅れる危険性があります。
呼吸
脳神経障害時には、その障害部位により特異的な呼吸パターンを示します。
そのため、呼吸パターンの把握によりどの位置で障害が起きているのかを推測することができます。
呼吸中枢は脳幹の橋および延髄にわたって存在しており、障害部位が延髄に近づくほど呼吸は不規則で困難なものとなります。
脳幹機能が障害された場合、意識障害とともに呼吸障害も起こりやすくなります。
そして意識障害による舌根沈下や誤嚥などから二次的に呼吸状態が悪化する危険性もあります。
また呼吸障害による低酸素血症がさらに意識障害を助長することにも注意が必要です。
眼の症状
脳神経系アセスメントにおいて眼の症状を観察することで多くの情報を得ることができます。
正常な瞳孔径は2~4mm程度と言われており、2mm以下を縮瞳、5mm以上を散瞳と言います。
通常は瞳孔径の左右差は認めないため、瞳孔径に1mm以上の差がある場合は何らかの異常があると考えます。
しかし、瞳孔径や対光反射は病変の存在を示す意義がある反面、薬物や代謝性要因によっても変化するため、その解釈には注意が必要です。
頭蓋内圧亢進症状
脳神経系のアセスメントを行う上で、頭蓋内圧亢進の知識を得ておくことは重要です。
頭蓋内圧亢進やそれにともなう脳ヘルニアは、患者にとって生命危機となるからです。
頭蓋内圧亢進
脳実質は柔らかく重要な組織であるため、硬い頭蓋骨で覆われています。
頭蓋骨内の容積は一定でかつ閉鎖的空間であるため、頭蓋内容量が増加した際に頭蓋内圧亢進が起こります。
頭蓋内圧亢進により「脳灌流圧低下による脳虚血」と「脳ヘルニアによる脳幹部圧迫」が起こることが問題です。
頭蓋内は、脳実質(約80%)・髄液(約10%)・血液(約10%)で占められています。
頭蓋内圧亢進の原因は、以下の通りです。
これらのいずれかの増加やそれ以外の占拠性病変の存在が原因となります。
頭蓋内圧亢進症状は、以下の通りです。
頭蓋内圧亢進初期は、髄液産生低下や脳血液量現象などの代償機構が働くことにより、症状が発現しないことがあります。
急激な頭蓋内圧亢進時にはこの代償機構が追いつかないことになります。
そのため、急性発症と慢性発症では頭蓋内圧亢進症状に違いが生じます。
新生児や乳児などの低年齢児では、大泉門の触知をすることで頭蓋内圧亢進の有無や程度を観察することができます。

脳ヘルニア
頭蓋内圧亢進によって、脳は圧の低い方へ移動します。
脳の中は硬膜によって仕切られており、その区域の開口部から脳組織が突出することを脳ヘルニアといいます。
押し出された場所の組織の損傷だけでなく、押し出された先の組織も圧迫されて損傷されます。
組織の循環障害や脳幹圧迫により生命維持が困難となる場合があり、予防と早期発見が重要です。
頭蓋内圧亢進が疑われた場合には、早期対処とともに脳ヘルニアによる兆候を経時的に観察する必要があります。
まとめ
小児は、自覚症状を適切に表現することが難しいため、他覚所見を積極的に観察することが必要です。
家族からの「何かおかしい」といった訴えや変化も含めてアセスメントを行い、早期介入できるようにしていきましょう。