こんにちは。
小児集中治療室に勤務する看護師のpi ✿︎(@shinkan0607)です。
子どもを看る上での知識を発信しております。
クリティカル領域では、患者のインアウトバランスが大切になるため利尿薬が多く使用されています。
利尿薬の作用機序を理解するには、ひとの体液の分布、体液量や血管内ボリュームバランスがどのように制御されているのかを知ることが重要です。
今回は、利尿薬の特徴について血管内ボリュームの面も含めてお話ししていきたいと思います。
タップして目次を表示
体液量のコントロール
ひとの体液分布は、男性では体重の60%、女性では体重の50%、新生児では体重の80%、乳児は体重の70%を体液が占めています。
その体液の割合としては、
・細胞外液( セカンドスペース) 1/3
さらに細胞外液は、
・間質(細胞外液の3/4)
に分かれます。
これらの細胞内液・血管内・間質の3つのパーツでの水のやり取りが問題となりますが、水自体はこれらの3つのパーツを自由に行き来します。
細胞内と細胞外の移動に最も重要な因子はナトリウムです。
ナトリウムがあることで細胞外への水の貯留が起こります。
これは体液バランスをコントロールする上で重要な点です。
そのためナトリウムがどうのように腎臓内でやり取りがされているのかを理解しましょう。
腎臓の働き
心臓はポンプとして機能し、動脈系に血液を打ち出します。
その動脈を通り、全身の各重要臓器(脳・肝・筋肉など)に血液は移動します。
そして腎臓にも腹部・腹部大動脈・腎動脈を通り、血液が到達します。
腎臓には常に約1/4の血液が常に流れています。
流れてくる血液量を常にモニタリングして、「血液が多いのか?血液が少ないのか?」を判断し、血管内ボリュームをコントロールするように働きます。
つまり、腎臓は体液管理に欠かせない臓器です。
血管内ボリュームのコントロールには、4つのメカニズムが必要であると言われています。
さらに詳しく
4つのメカニズム!
- レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系
- ナトリウム利尿ペプチド
- 抗利尿ホルモン(ADH)
- 腎交感神経
レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系
レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系は以下の機序で作用しています。
アンギオテンシンⅡには、4つの作用(上記図:①〜④)があります。
この4つの作用はどれも体内に水を溜め込む、つまり血管内ボリューム維持のための作用です。
ナトリウム利尿ペプチド
ナトリウム利尿ペプチドは、特に血管内ボリュームが増加した時に分泌されます。
末梢血管に作用して血管を拡張させ、腎臓に作用し糸球体濾過が上昇し、ナトリウム利尿をもたらします。
つまり、血管内ボリュームを減らすように作用するホルモンです。
抗利尿ホルモン
抗利尿ホルモン(antidiuretic hormone :ADH バソプレシン)は、血漿浸透圧の上昇、血管内ボリュームの低下に反応して、脳下垂体後葉から分泌されます。
末梢血管を収縮させ、腎集合管における水分再吸収を促進させて、血管内ボリューム維持に作用します。
腎交感神経
腎交感神経の緊張により腎血流を調整します。
腎血流の調整は、糸球体へ繋がる輸入細動脈と、糸球体から出る輸出細動脈に作用することで行われます。
血管内ボリュームが減少すると、腎交感神経は輸出細動脈よりも輸入細動脈の収縮を刺激し、糸球体濾過を低下させて腎血流を落とします。
最終的には、ナトリウム利尿を減少させることになります。
利尿薬の作用部位
利尿薬が作用する尿細管は4つのパーツに分かれています。
ココがポイント
- 近位尿細管
- ヘンレループ
- 遠位尿細管
- 集合管
腎臓での尿産生の流れは、まず糸球体で血液が濾過されて原尿100L/dayができます。
それが近位尿細管→ヘンレループ→遠位尿細管→集合管で再吸収を経て、最終的に尿産生1~1.5L/dayができます。
つまり、原尿の99%が尿細管で再吸収されています。
それぞれの部位での再吸収率は以下の通りです。
腎臓での水の再吸収はナトリウムの再吸収によるため、ナトリウムの再吸収の程度に応じてどの部位で水の再吸収の割合が多いかが分かります。
小児の利尿薬の特徴と副作用
利尿作用を状態に応じて効果的に作用させるためには、それぞれの利尿薬の特徴、作用機序と副作用を理解しましょう。
小児の利尿薬の使い方
ICUでは、特に術後及びrefill期の利尿期、そして人工呼吸器ウィーニング時期に血管内ボリュームを減らす目的でラシックス+ダイアモックスの併用を行います。
術後の抜管前の状態は、いかが予想されます。
チェック
- サードスペースからの水の戻りにより血管内ボリュームが増加
- ボリュームオーバーによるうっ血状態
ウィーニングの過程において陽圧換気から自発呼吸に変化します。
そのため抜管前には、いかが絶対に必要となります。
ココがポイント
- 血管内ボリュームを適切にする、ないし減らし気味にする
- アシドーシス、アルカローシスなどのpHの補正
- 自発呼吸の誘発
- 電解質異常の補正(特にCa,P,Mg)
が絶対的に必要となります。
ボリュームオーバーの時は、さらに利尿をつけるために、ループ利尿薬を使用しての除水を図ります。
ループ利尿薬の頻回な使用によっては、代謝性アルカローシスや電解質異常(低Mg,Cl,K血症)が起こる可能性があります。
代謝性アルカローシスが進行すると体内ではpHを一定に保とうとして
↓
pHを一定に保とうとするため、CO2貯留↑
↓
自発呼吸の抑制
上記のようになるため、ウィーニングが進まなくなります。
そのためループ利尿薬の欠点を補い自発呼吸を出すために、ダイアモックスを併用します。
小児の利尿薬の効果を最大限に引き出す方法
step
1
1日1回の投与から1日複数回投与のフロセミドの増量
長時間作用型ループ利尿薬への変更
経口利尿薬から経静脈投与への変更
step
2
ループ利尿薬の持続投与への変更
step
3
利尿薬の併用(ヘンレループ以降で作用するものと組み合わせると効果が増大する)
step
4
ハンプを併用する
小児の利尿薬 まとめ
クリティカルケアの領域では、利尿薬は体液バランスの管理を行う上で欠かせない薬剤の一つです。
腎臓での水とナトリウムの調整のメカニズムを理解することは、利尿薬の使い方を理解する上で欠かせません。
また、代表的な利尿薬については作用機序と副作用について理解するようにしましょう。