こんにちは。
小児集中治療室に勤務する看護師のpi ✿︎(@shinkan0607) です。
子どもを看る上での知識を発信しております。
クリティカル領域で大切な「急性血液透析」の原理を知っていますか?
今回は、急性血液浄化療法の原理を理解しましょう!
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急性血液浄化療法とは?
急性血液浄化療法の「血液浄化=blood purincation 」は、血液をきれいにすると言うことを意味しています。
血液浄化療法には大きく分けて2つの役割があり、腎代替と肝代替があります。
今回は、腎代替療法=RRT(Renal Replacement Therapy)について主に説明していきたいと思います。
腎代替療法(RRT)
腎代替療法を行うにはどのような方法があるのでしょうか?
RTTは、24時間絶え間なく行う方法と数時間に限って行う方法に分類できます。
1日24時間絶え間なく行う場合は、持続的腎代替療法:CRRT(continuous renal replacement therapy)と言います。
一方で、1日数時間に限って行う方法は、間欠的腎代替療法:IRRT(ntermittent renal replacement therapy)と言います。
持続的腎代替療法(CRRT)の種類
24時間以上行うCRRTには、血液濾過、血液透析、血液濾過透析、限外濾過などがあります。
腹膜透析も24時間行う場合もあるため、CRRTに分類されます。
ココがポイント
CHF:持続的血液濾過
CHD:持続的血液透析
CHDF:持続的血液透析濾過
SCFU:持続的限外濾過
PD:腹膜透析
ICUでよく使われている血液透析ですが、臨床ではCRRTを指すことが多いです。
急性血液浄化療法を理解するための原理
血液浄化療法にはさまざまなモードが存在しますが、基本的には4つの原理によって行われています。
血液浄化療法4つの原理
- 限外濾過
- 吸着
- 濾過 convection → 血液濾過 hemofiltration(HF)
- 拡散 diffusion → 血液透析 hemodialysis(HD)
限外濾過
限外濾過は、半透膜を通して圧をかけた時に水が片方からもう一方へ移動することを意味しています。
限外濾過の仕組みについてコーヒードリップを使って考えてみましょう。
この時のフィルターは「半透膜」の役割と考えます。
フィルターを敷いたコーヒードリップに粉とお湯を注ぐとコーヒーカップの中にコーヒーが溜まりますね。
これは「重力によってコーヒーフィルターをコーヒーが通過したから」です。
この考え方が血液濾過で重要な概念となる限外濾過の仕組みになります。
半透膜の血液浄化フィルターの中でも同様に考えることができます。
中空糸の半透膜フィルターを半分に分けて考えると、血液側(中空糸内側)から陽圧をかけると濾液側(中空系外側)へと水分が移動します。
また濾液側(中空糸外側)から陰圧をかけると血液側(中空糸内側)から水分を濾液側へ引っ張ることで移動ができます。
このように血液側に陽圧をかけたり、濾液側に陰圧をかけることで水の移動が起こることを限外濾過と言います。
この限外ろかの原理を用いて、体内で過剰となった水分を除去するCRRTを緩徐持続式限外濾過:SCFUと言います。
どの程度の水分を限外できるのかは、血液の流れる速度、半透膜にかかる圧によって変えることができます。
つまり、高い圧をフィルターにかけて流速が早いと限外濾過量は増えます。
低い圧をフィルターにかけて流速が遅くなると限外濾過量は減ります。
急性血液浄化療法で「除水(水分を除去すること)」を行うときはこの原理を用いています。
吸着
血液中の物質を血液浄化フィルター内に血液を通すことで、血液中の物質をフィルターの膜表面にくっつけることで除去する方法を吸着(adsorption)と言います。
エアフィルターの原理を使って考えてみましょう。
汚れた空気がエアフィルターを通過するとフィルターで埃がトラップされて空気が清浄されます。
しかし、吸着すべき物質が多いと目詰まりしていまいますよね。この点が欠点です。
血液浄化フィルター内も同様で、大きな分子量の物質を膜表面にくっつけることで除去する方法として吸着が行われています。
吸着物質の濃度が高いとすぐに目詰まりしてしまい、吸着効果が失われます。
濾過(血液濾過)
血液濾過では、半透膜の膜孔を通過する時に十分な大きさであれば、血液側から陽圧をかけるか排液(濾液)側から陰圧をかけることで水分を引っ張ります。
これらの原理をもとに血液中の不要な物質を移動させることが可能となります。
濾過の原理を用いた血液濾過では、血流速度が速ければ速いほど多くの不要物質を血液中から排液側(濾液)へ移動させることが可能になります。
血液濾過は、半透膜であるフィルターの孔を通過する限りの中分子量物質の移動に優れています。
しかし、血流の速度が早いと沢山の水分と血液中の物質が排液側に移動するため、急激に血管内ボリュームが減り血液濾過を続けることができなくなります。
急激な血管内ボリュームの低下を避けることと血流速度を維持させることを目的として、置換液(補充液)を流します。
ココがポイント
置換液を流す目的!
① 急激な血管内ボリュームの低下を避ける
② フィルターの前後に速い速度で流すことで血液濾過をさらに円滑にさせる
拡散 (血液透析)
拡散は、半透膜を通して濃度勾配に従って物質が移動することを意味しています。
拡散を、コーヒーに砂糖を溶かす原理で考えてみましょう。
コーヒーの中に砂糖を溶かすと、時間の経過とともにコーヒーに砂糖が溶けていき均一の濃度になります。
この原理が拡散です。
あいだに半透膜を置いて砂糖を溶かした場合も同様です。
半透膜を通過する限り同様に均一に砂糖は広がります。(=拡散)
濃度差が十分にあり、小さいものほど移動が速いため「拡散」を利用した血液透析は、小分子物質を除去するのに優れています。
血液透析にはもう1つ重要な概念があります。
それは「対向流」です。
半透膜を通して血液と透析液を反対方向に流すことを意味します。
血液と透析液を同じ方向に流した場合、半透膜である血液浄化フィルターを通して濃度勾配に従って血液から透析液方向に移動します。
濃度差が無くなった時点で物質の移動は終わってしまいます。
一方、血液と透析液を反対方向に流した場合、半透膜である血液浄化フィルターを通して濃度勾配が常に維持されます。
そのため血液と透析液が接している間、物質の移動が可能になります。つまり、大量の濃度勾配による拡散が可能になります。
血液透析では、必ず血液と反対方向に透析液を流す「対向流」を用いることで透析効率を維持させます。
濃度勾配があり、血液と透析液を反対方向に流すことで部室の移動を可能にするため、血液中の高い濃度の物質は透析液側に、透析液の高い濃度の物質は血液側に移動することになります。
まとめ
急性血液浄化療法を理解する上で大切な4つの原理について説明しました。
クリティカル領域では、持続的腎代替療法は頻回に使用されます。
4つの原理の中でも「血液濾過」と「血液透析」の組み合わせが最も重要となるため、しっかりと理解しましょう。
これらを組み合わせたものが普段見ている「持続的血液濾過透析(=CHDF)」になります。