- 頭蓋内圧亢進ってどんな機序?
- 頭蓋内圧亢進の看護ポイントは?
- ICPのモニタリングについて知りたい
この記事を読むと【頭蓋内圧亢進患者の看護】について理解することができます。
子どもを看る上での知識を発信しております。

この記事を読んでほしい方
- 頭蓋内圧亢進について理解したい方
- 頭蓋内圧亢進患者の看護を知りたい方
- ICPモニタリング中の看護について理解したい方
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頭蓋内圧って?
頭蓋内圧は、頭蓋骨内部の圧のことです。
脳には頭蓋内圧の自動調整能があります。
- 静的自動調整能
血圧の変化に伴う短時間の脳血流量変化は考慮されない調整機能
- 動的自動調整能
急激な血圧変動に対する調整機能
脳の血流は、灌流圧によって調整されています。
圧力の差によって流れるため、圧較差が大きいほどよく流れます。
頭蓋内圧亢進とは?
脳は周囲が頭蓋骨に囲まれた閉鎖空間であるため、その中に腫瘍ができると逃げ場がなく、その結果、頭蓋骨の中の圧力(頭蓋内圧)が高くなります。これによってあらわれる頭痛や吐き気などの症状を、頭蓋内圧亢進症状といいます。
簡単にお伝えすると
頭の容量は一定であるため、脳出血や脳腫瘍、脳浮腫(のうふしゅ)*1ができると頭の中で脳が強く圧迫れてしまいます。
この状態のことを「頭蓋内圧亢進」と言います。

この頭蓋内圧亢進が起こることによって、さまざまな症状が現れてきます。
頭蓋内圧亢進の原因
頭蓋内圧亢進は、以下のような原因によって起こります。
- 脳浮腫
- 脳血流量の変化
→ 二酸化炭素分圧の上昇による脳循環血液量の増加など
- 脳脊髄液の増加
→ 急性水頭症や脈絡叢乳頭腫など
- 頭蓋内占拠病変
→ 脳出血、脳腫瘍、頭蓋内血腫など
頭蓋内圧亢進の症状
頭蓋内圧亢進症状は、慢性期と急性期で少し異なります。
小児は、症状を上手に表現することができないため、見逃さないように注意しましょう。
特にお家で気をつけておきたいこと、病院で気をつけておきたいことを分けて説明したいと思います。
慢性頭蓋内圧亢進:お家で気をつけたい症状
- 頭の周囲が大きくなる
- 嘔吐がある
- 機嫌が悪い、グズグズする
- あまり動かなくなる
- 体重の増えが悪くなる
症状によっては、発達遅滞や胃腸炎などと間違われる可能性もあるため注意が必要です。
また人間の頭蓋内圧は常に一定ではなく睡眠中にやや高くなることから、朝起きたときに症状が強くなることがあります。
急性頭蓋内圧亢進:病院で気をつけたい症状
- クッシング現象(徐脈、血圧上昇、脈圧拡大)
- 意識障害
- 呼吸障害
- 瞳孔異常
- 頭痛
急性期では、特にクッシング徴候や意識障害に注意します。
意識障害が起こると呼吸障害も併発しやすいため、神経所見や呼吸評価などが重要になってきます。
さらに頭蓋内圧亢進が進行すると脳ヘルニアが生じ、生命の危機に陥ります。

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【頭蓋内圧亢進】クッシング現象とは?
クッシング現象は、高血圧・徐脈・脈圧拡大、そして呼吸抑制があります。

簡単に説明すると
- 脳腫瘍や脳浮腫、脳出血によって脳実質が圧迫される
- 脳の容量は一定であるため、行き場がなくなる(圧が上がっている状態)
- 脳に栄養を送っている血管は、脳実質に押されて、通常の血圧では血流を保てない
- そのため身体の反応としては、血圧をあげて脳への血流を保とうとする
このような流れが身体の中で起こります。
クッシング徴候:高血圧
先ほどの流れから働いてくるのが交感神経です。
交感神経が興奮すると
- 心筋力の増強
- 末梢血管の収縮
- 全身の末梢血管抵抗が上昇
これらが生じて高血圧となります。
クッシング徴候:徐脈

人の身体は、高血圧を感知する(血管圧受容体が刺激される)とアセチルコリンを分泌されます。
これにより迷走神経反射によって、徐脈となります。
クッシング現象=血圧上昇+徐脈 と言われますが
実際に頭蓋内圧亢進によって血圧が上昇している段階では、頻脈になる症例も多いので注意しましょう!
頭蓋内圧亢進の看護
頭蓋内圧亢進が生じている患者さんを臨床で見る場合は
以下の項目に注意する必要があります。
- バイタルサイン
- 呼吸状態の変化
- 頭痛、吐き気の有無
- IN/OUTバランス
- 頭蓋内圧モニター
- 意識レベル
- 電解質濃度
- チアノーゼの有無
- 四肢の運動の程度
- うっ血乳頭の有無
- 対光反射の有無
特に意識レベル、呼吸状態、瞳孔所見に注意する必要があります。
脳ヘルニアとは
脳ヘルニアとは、脳組織の一部が本来の位置から押し出されて頭蓋腔の区画を超えてしまうことです。
脳ヘルニアは、圧迫部位によって大脳鎌下ヘルニア、大孔ヘルニア、テント切痕ヘルニアの3種類に分けられます。
脳ヘルニアの種類 | 圧迫部位 | 主な症状 |
大脳鎌下ヘルニア | 前頭葉 | 進行するとテント切痕ヘルニアになる |
テント切痕ヘルニア | 間脳 | 意識障害 チェーン・ストーク呼吸 |
中脳 | 昏睡状態、中枢性過呼吸 散瞳・対光反射消失、徐脳強直 |
|
延髄 | 昏睡状態、呼吸失調、四肢弛緩 | |
大孔ヘルニア | 延髄 | 意識障害、呼吸障害 |
脳ヘルニアの症状として理解しておきましょう。
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頭蓋内圧亢進時の治療
頭蓋内は、脳組織、血液、脳髄液で構成されており、その容積および圧は一定です。
しかし、何らかの病変(出血、浮腫、腫瘍など)が存在すると頭蓋内圧は上昇します。
その結果、脳実質が圧排され脳灌流圧(CCP)が低下し、脳に不可逆的な障害をもたらします。
そのため急性期の重篤な症例では、ICP(頭蓋内圧)のモニタリングが必要となります。
ICP(頭蓋内圧)モニタリング
頭蓋内圧(ICP)は、マイクロセンサーの先端を脳室内に留置することによってモニタリングを行います。
マイクロセンサーは、とても細いラインとなっているため愛護的に取り扱う必要があります。
過度な張力や計画外で抜去がされないように注意が必要です。
また刺入部からの出血や髄液漏、留置部位の血腫や感染に留意します。
ICP(頭蓋内圧)モニタリングの評価
脳循環には、一定の脳灌流を維持しようとする動き(自動調整能)があります。
これは
脳灌流圧(CCP)=平均動脈圧(MAP)− 頭蓋内圧(ICP)
で表されます。
脳灌流圧(CPP)が低値で推移すると、脳組織が虚血していることが考えられます。
この場合、不可逆的な脳組織障害をきたす可能性があるため、早急に治療が必要です。
頭蓋内圧(ICP)や脳灌流圧(CPP)はどのように評価したらいいのでしょうか?
ICPを評価する指標
頭蓋内圧(ICP)を評価するためには、それぞれの基準値を理解しておく必要があります。
- 頭蓋内圧の基準値
新生児 6mmHg未満 小児 3~7mmHg 成人 10mmHg未満 - 頭蓋内圧の治療閾値
1歳未満 < 15mmHg 1~8歳未満 < 18mmHg 8歳以上 < 20mmHg - 脳灌流圧の治療閾値
乳幼児 ≦ 40mmHg 小児 ≦ 50mmHg 成人 ≦ 50~60mmHg
これらを用いて、実際に症例を用いて考えてみましょう!
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頭蓋内圧亢進について症例を用いて考えよう
頭蓋内圧の変化は、このように表で考えることができます。
脳灌流圧(CPP)=平均動脈圧(MAP)− 頭蓋内圧(ICP)
この図と式から頭蓋内圧亢進時のICP(頭蓋内圧)とCPP(脳灌流圧)の変化について考えてみましょう。
小児症例 → MAP:60 / ICP:10 の場合…
CPP = 60 - 10 = 50
このため、脳灌流圧(CPP)を保つことができています。
頭蓋内圧亢進が起こるとどうなるでしょうか?
小児症例 → MAP:60 / ICP:20 の場合…
CPP = 60 - 20 = 40
この場合、脳灌流圧(CPP)は保つことができていません。
この場合、人は自然と脳灌流圧を保とうとして代償反応が働きます。
小児症例 → ICP:20 / CPP:50 で保ちたい場合…
MAP = 20 + 50 = 70
このように平均血圧を上昇させて脳灌流圧(CPP)を保ちます。

ICP(頭蓋内圧)モニタリング時の看護
ICP(頭蓋内圧)モニタリングを行う患者の目標は、頭蓋内圧をあげないことです。
頭蓋内圧亢進が持続してしまうと脳に不可逆的障害を残す可能性があります。
そのため予防的介入が大切になります。
頭蓋内圧亢進に影響を与える因子
ICP(頭蓋内圧)の上昇を認めた場合は、頭蓋内圧亢進に影響を与えている要因を検索する必要があります。

頭蓋内圧亢進に影響を与える因子は、以下の通りです。
- PCO2 の上昇
- PO2の低下
- 低ナトリウム血症
- 交感神経緊張
- 高体温
- けいれん
- 頸静脈屈曲
要因を検索できたら、それぞれ介入していく必要があります。
脳灌流を維持する
- 頭部挙上30度、頭部正中位を保持する
- 良肢位の保持、除圧に努める
- ICPを下げるため、高浸透圧剤を投与する
頭部挙上、正中位保持を行うことで静脈灌流を良好に保ち、脳灌流の維持・改善を図ることができます。
また高浸透圧剤を使用するときは、浸透圧が高く静脈炎を起こす恐れがあるため、原則として中心静脈投与にしましょう。
換気を適正に保つ
- PCO2の上昇を避ける
- 腹腔内圧の上昇を避ける
- 分泌物の貯留や向き背景性の予防に努める
PCO2 の上昇は脳血管を拡張し、ICP(頭蓋内圧)が上昇します。

交感神経の緊張を避ける
- 刺激を最小限にする
- 必要に応じて鎮痛・鎮静薬の投与量を評価する
覚醒や苦痛による交感神経の緊張は、ICP(頭蓋内圧)の上昇に繋がります。
不要な刺激は避けるように心がける必要があります。
高体温を避ける
高体温は、脳代謝を活性化し脳血管を拡張させ、ICP(頭蓋内圧)の上昇をもたらします。
体温の上昇とICP(頭蓋内圧)の上昇との連動性がある場合は、積極的に解熱剤を使用します。
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まとめ
今回は、頭蓋内圧亢進について説明しました。
- クッシング現象(血圧上昇・徐脈・呼吸抑制)
- 頭蓋内圧と脳灌流圧の関係
- 頭蓋内圧を下げるための看護介入
ここを押さえて臨床に取り組みましょう!
看護師さん向けの記事は、こちらでまとめています。
用語整理
脳浮腫:脳実質内に異常な水分貯留を生じ、脳容積が増大した状態
脳灌流圧:脳へ流れる血流量のこと
参考文献
剱持雄二. “脳血流と頭蓋内圧、脳のホルモン分泌”. 看護roo!. 2020-10-26.https://www.kango-roo.com/learning/7617/ (参照2021-01-19)
福田隆浩.“頭蓋内圧の決定因子と圧力容積関係、頭蓋内圧上昇の原因”. https://plaza.umin.ac.jp/jikei-np/introduction/4th109.html (参照2021-01-19)
三浦規雅(2018)『重症小児患者ケア ガイドブック』道又元裕,総合医学社
長谷川素美『BRAIN NURSING 9号』株式会社メディカ出版,2016年
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