こんにちは。
小児集中治療室に勤務する看護師のpi ✿︎(@shinkan0607) です。
子どもを看る上での知識を発信しております。
開心術後には様々な合併症に注意する必要があります。
特に術直後には、急激な変化により引き起こすと患者の生命危機に直結するものがあります。
術後変化について理解し、引き起こさないための管理を理解しましょう。
この記事でわかること
- 低心拍出量症候群(LOS)の発生機序とその対応
- 肺高血圧クライシス(PH crisis)の発生機序とその対応
- 肺血管抵抗に影響を与える因子について
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低心拍出量症候群とは?
開心術後に、心拍出量が低下した状態となり組織や臓器の低灌流が持続する状態を総合して低心拍出量症候群(low cardiac output syndrome : LOS)と言います。
LOSの原因には、以下の要素が挙げられます。
低心拍出量症候群(LOS)の徴候
臨床所見として注意すること!
血圧低下、脈圧低下、頻脈または徐脈、不整脈、CVP上昇、尿量低下、SvO2の低下、末梢循環不全(四肢末梢の冷感)、冷汗、チアノーゼ、不機嫌など
これらの臨床所見にいち早く気付き、早期介入をできるようにするためには、循環動態のモニタリングが重要となってきます。
循環動態については、「小児の循環評価」を参照にして下さい。
低心拍出量症候群(LOS)の具体的な例
LOSに陥る状況としては、以下のようなパターンが臨床では見られます。
開心術後の患者でドレーン量が多い、出血、尿量増加などをきっかけに
循環血液量減少性ショックになる。
↓
組織灌流低下・低酸素血症し、嫌気性代謝が起こる。
↓
その結果、乳酸値上昇(Lac>2.0)および
乳酸アシドーシス(pH7.35以上)が生じる。
↓
ショック・心停止のリスクが高まる。
このような状況にならないために看護師として管理やモニタリングが重要となってきます。
同時に「血液ガス分析」についても理解しておく必要があります。
肺高血圧クライシスとは?
肺高血圧クライシス:PH crisisとは、急激な肺血管抵抗増大による循環不全状態が生じることを指します。
左右シャントが存在する先天性心疾患では、高肺血流量の持続により血管壁の肥厚から肺血管の狭小化や弾性の低下をきたし肺高血圧を呈します。
または、総肺静脈還流異常などのように肺静脈狭窄が存在する先天性心疾患では、肺小動脈の低形成をきたし、肺高血圧を呈することがあります。
術後、血管動態が正常化するとともに肺高血圧は改善しますが、開心術や人工心肺による侵襲によって血管内皮細胞が惹起され、肺血管は易刺激性となります。
また、開心術後の一過性な心機能低下や循環不全によっても肺高血圧は残存します。
開心術後:一過性の心機能低下や循環不全により肺高血圧が残存している
肺血管は易刺激性となっている!
↓
刺激によって肺血肝攣縮が引き起こされる
↓
肺血管抵抗が上昇する
↓
右室高負荷の急激な増加により右室拡大をきたし、左心系を圧排しする
↓
左室前負荷の低下と左室拡張障害による重篤な心拍出量の低下、低酸素血症を呈する
PH crisisの発生機序を理解するとなぜ危機的な状況に陥るのかが分かりますね。
PH crisisの徴候
PH crisisは、臨床所見としてSpO2の低下、CVPの上昇、血圧低下、心拍数の増加、急激な徐脈、顔色不良、肝腫大、尿量低下などに注意します。
PH crisisの進行は、急速であるため早急な対応を要します。
ココがポイント
初期対応として開始すること!
・純酸素による用手的過換気
・鎮静、鎮痛
・容量負荷
・必要であれば炭酸水素ナトリウム(メイロン)によるアシドーシスの是正
・状況に応じて、カテコラミンの増量
・一酸化窒素吸入療法
誘因と予防
PH crisisを起こすことは、患者にとって危機的状況へ陥ることを意味します。
そのため、私たち看護師はPH crisisを引き起こさないための看護及び管理が求められます。
実際に臨床では、以下のことに注意して取り組む必要があります。
肺血管抵抗に影響する因子
PHクライシスの機序を理解するには、肺血管抵抗に影響する因子について理解しておく必要があります。
肺血管抵抗や体血管抵抗が上昇・減少するには、様々な因子があります。
これらの可能性を理解した上で管理していくことが大事になってきます。
体位と循環動態の変化
ICUへ入室される患者さんは、重症度も高く、ベッド上安静を強いられることも多いです。
そのため、無気肺、肺炎、深部静脈血栓、関節拘縮、褥瘡などの合併症を予防するための積極的な体位変換は重要となります。
体位による循環動態への影響は、健常者では自律神経によって調整されています。
しかし、開心術後は自律神経系の調整能が低下し、心機能低下や循環血液量低下が生じていることがあり、循環動態への影響が大きいため慎重に進める必要があります。
循環動態が不安定である場合は、積極的に体位交換を行わないこともあります。
その際には、褥瘡予防として除圧を積極的に行うように工夫します。
まとめ
LOSとPH crisisは、術後の患者にとって危機的な状況に陥るリスクが高いため特に注意して管理やモニタリングを行います。
これらの発生機序を理解し、引き起こさないための看護を行うことがICUでの術直後の管理では求められています。
しっかりと理解した上で臨床に取り組んでいくようにしましょう。