集中治療

小児の開心術後管理

こんにちは。
小児集中治療室に勤務する看護師のpi ✿︎(@shinkan0607)です。
子どもを看る上での知識を発信しております。

 

開心術後の管理として、侵襲の影響を理解すると共に、術後の合併症のリスク因子を評価し、必要なモニタリングを行うことで合併症の早期発見と予防に努める必要があります。

今回は、開心術後をメインとした循環管理についてお話しします。



小児の開心術の影響

開心術では、心停止下において術中の循環を維持するために人工心肺が使用されます。

人工心肺を用いた手術では、血液希釈、低体温、血液と人工物表面の接触、ヘパリンによる抗凝固とプロタミン硫酸塩による中和、非生理的血液灌流(非拍動性)など生体に多くの侵襲が加わります。

これらの侵襲によって内分泌環境の変化、塞栓因子の形成、全身炎症反応、凝固止血障害などが引き起こされます。

 

小児の開心術後 循環管理

循環管理の目的は、全身の組織・臓器への血流を維持し、酸素需給バランスを保つことです。

全身への酸素需給は、動脈血酸素含有量と心拍出量に規定されます。

心拍出量は、①心拍数 ②心収縮力 ③前負荷 ④後負荷 で規定されています。

 

心拍数

心拍数が増加すると心拍出量も増加するため、術後は薬剤やペースメーカーによって意図的に頻脈として心拍出量を維持する場合があります。

しかし、過剰な頻脈では拡張期が短くなることによる心室への血液流入が減少するため心拍出量は減少します。

不整脈が出ることによってしっかりと拍出されないため、不整脈の出現によっても心拍出量は減少します。

 

心収縮力

心収縮力は、交感神経刺激やカルシウムイオンの増加で増強し、副交感神経刺激、低酸素血症、アシドーシス、心筋障害によって減弱します。

心収縮力低下による心拍出量低下は、前負荷・心拍数の適正化・後負荷の軽減・心収縮力を増強する薬剤投与によって改善すると言われています。

前負荷

前負荷は、心室を拡張させるための負荷のことで主に心室に流入する血液量で規定されています。

前負荷が増量すると、心筋は大きく伸展し、収縮力も増加し、心拍出量が増加します。

しかし、限界があり過度な前負荷がかかると心拍出量は減少します。

心臓に戻ってくる血液量=前負荷

と言うイメージがわかりやすいよ!

 

後負荷

後負荷は、心室が収縮し血液を送り出すときにかかる負荷のことで血管抵抗に規定されます。

血管収縮は、血圧を上昇させるがより強い心収縮力を要し、心収縮力が低下している状態で心拍出量は低下します。

心臓から血液が送り出されるときの圧=後負荷

と言うイメージがわかりやすいよ!

 

循環モニタリング

循環の主な目的は、全身の組織への酸素の供給、細胞代謝の維持、その副産物を除去することになります。

 

心拍数・心電図

小児の心筋特性として収縮組織は少なく、支持組織が多いことから心拍出量の増加は心拍数と拡張期充満圧(前負荷)に依存します。

循環障害の代償反応として頻脈が生じることがあります。

頻脈の持続は心拍出量の低下や冠動脈血流の減少に繋がるため注意が必要です。

 

動脈圧(ABP)

収縮期血圧は、心拍出量とそれを押し出す心収縮力、それに対する血管抵抗によって決まります。

拡張期血圧は、大動脈の収縮により末梢に送り出す力と血管抵抗によって決ります。

 

中心静脈圧(CVP)

CVPは、右房に近接した胸部大静脈血圧を示しています。

右室拡張末期圧と等しいとされ、前負荷の指標とされています。

ココがポイント

CVP上昇の因子!
循環血液量の増加 心不全に伴う心拍出量の低下 陽圧呼吸 肺血管抵抗の上昇
心収縮力の低下 交感神経賦活化 血管収縮物質 立位から臥位への体位変換

 

混合静脈血酸素飽和度(SvO2)

生体の酸素需給バランスを示す感度の高い指標として使用されています。

中心静脈血酸素飽和度(SvO2)は、肺動脈血での酸素飽和度であり、酸素供給量(動脈血酸素飽和度・Hb値・心拍出量)と酸素消費量で規定されます。

 

乳酸値(Lactate)

Lactateは、組織酸素化が障害され嫌気性代謝が亢進すると上昇するため、組織循環障害の存在を示します。

全身の循環不全のほか、腸管虚血や四肢虚血といった局所の灌流障害でも上昇します。

動静脈シャントや組織細胞レベルの酸素障害が起こると嫌気性代謝が進み、組織で乳酸が産生されます。

 

混合血酸素飽和度(rSO2)

生体の酸素供給と消費のバランスを示す感度の高い指標とされています。

rSO2は、脳灌流の維持と脳障害・脳機能障害を防ぐ為にモニタリングを行います。

局所の混合血酸素飽和度(rSO2)をモニタリングするINVOSは非侵襲的です。

また、心拍出量低下の評価にも繋がります。

 

こちらの「循環評価」も参考にして下さい。



混合血酸素飽和度の考え方

rSO2の急激な低下は脳灌流障害や低酸素を示します。

臓器の酸素消費量は体温に規定されるため、他の要因が一定であればrSO2は体温に依存して変化します。

供給はどれだけHbが酸素を運んでくるかで決まるためHb量、Hb酸素飽和度、臓器血流量で規定されます。

出血によるHbの低下、心拍出量の低下によりrSO2は影響を受けることになります。

rSO2はうっ血の影響も受けます。

うっ血が軽度であれば変化はないか軽度上昇しますが、高度のうっ血が続くと低下します。

例えば…
「貧血がなく、体温、SpO2の値が正常。頭部のrSO2は45%であった場合。」

酸素消費は正常、供給は低下、酸素共有量の低下の原因は
心拍出量の低下であると考えられる。

低いrSO2値を改善させるには、血中の二酸化炭素を貯留させる
呼吸管理を行うことが有効となる。

炭酸ガスの貯留により脳血管の拡張と交感神経刺激による
心拍出量の増加が得られるためである

 

小児の開心術後管理 まとめ

人工心肺や開心術による多大な侵襲に対して、生体は代償機構を働かせて対応しようとします。

しかし、代償機構には限界があるため、破綻すると生命の危機にさらされることになります。

開心術後の管理として、侵襲の影響を理解すると共に、術前・術後の血行動態を理解し、心負荷の変化、肺高血圧の残存、不整脈のリスク・合併症のリスク因子を評価し、必要なモニタリングを行うことで合併症の早期発見と予防に努める必要があります。

 

以上のことを臨床では注意し、取り組んでいきましょう。

 

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■ 看護師 / 小児集中治療 ■ 小児科ナース / PALS 資格所有 ■ 気付けば中堅クラスになっていました ■ 子どもを看るうえで必要な知識を発信します

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