こんにちは。
小児集中治療室に勤務する看護師のpi ✿︎(@shinkan0607) です。
子どもを看る上での知識を発信しております。
出産後1年未満に死亡した女性の死因は、自殺が最も多いと言われています。
原因としては、産後うつの悪化などの可能性があると考えられています。
産後うつは、一体何がきっかけで発症するのでしょうか?
マタニティーブルーと産後うつの違い
マタニティーブルーという言葉を耳にしたことはありますか?
マタニティーブルーは、産後3日以内にみられる軽度の産後うつ病の一種で、悲しさや惨めさなどの感情が溢れてきたり、気分が落ち込んでしまうなどの症状がある状態のことです。
ほとんどの場合は、一過性のものであることが多く、家族や友人の理解と支えがあれば2週間程度で治ってきます。
一方で産後うつ病は、これよりも深刻な気分の変動のことをさします。
産後うつ病になると症状が数週間から数カ月間続き、日常生活に支障が出できます。
産後うつは、約10~15%のママに発症すると言われています。
さらに状態が進むと重症化して産後に精神病へと進行してしまう場合もあるため、早めの治療が必要になります。
産後うつの症状
産後うつの症状としては、以下のものがあります。
ココがポイント
- 極度の悲しみ
- なんでもないのに涙が出てくる
- 気分の変動が激しい
- 普段より怒りやすくなる
- 極度の疲労感
また一般的ではありませんが、このような症状が出ることもあります。
ココに注意
- 睡眠障害
- 頭痛及び全身の痛み
- 性行為や他の活動への興味の消失
- 不安発作またはパニック発作
- 食欲の減退または過食
- 日常生活を送ることが困難になる
- 子どもに対する関心の喪失または不合理な心配
- 無力感または絶望感
- こういった感情を持っていることへの罪悪感
- 自殺念慮
母親が子どもとの絆を築けないことがあります。
これらが原因となり、子どもに情緒的、社会的、認知的な問題が生じることもあります。
産後うつ病の症状が進行してくると産後精神病になることもあります。
うつ病だけでなく、幻覚や幻聴、異常行動などを起こすこともあるため子育てだけでなく、夫婦の絆にも障害を与えることにもなります。
治療をしなかった場合には、産後うつは数ヶ月から数年続くこともあるため早期の治療が必要になります。
産後うつの原因
以下のようなものが産後得うつの原因と考えられています。
ココに注意
- 妊娠前や妊娠中にあったうつ病
- 近親者のうつ病
- 分娩後にみられる急激なホルモン濃度の変化
- 夫婦関係などの家庭内問題
- 家族からのサポート不足
- 妊娠に関連した問題や葛藤
うつ病は産後うつの発症リスクを大きく上昇させることになります。
そのため、過去にうつ病歴がある場合には主治医や助産師に伝える必要があります。
妊娠が計画外であった、パートナーに失業中などの経済的な問題など大きな不安要素があったなど、大きなストレスや孤独感もリスクの原因として考えられます。
産後うつ病の治療
産後の女性がマタニティーブルーになっても、家族や友人の支えがあれば、ほかに治療が必要になることはほとんどありません。
しかし、うつ病と診断された場合は医療機関の受診を行う必要もあります。
うつ病の治療としては、
精神療法(カウンセリング)と抗うつ薬などの薬物療法
が挙げられます。
精神療法では対人関係療法や認知行動療法などがありますが、ストレスに対しての適応、絶望感や否定的な考え方について観点を変えてマイナス思考のループから抜け出していく心理療法になります。
カウンセラーやセラピストに自分の悩みを相談することでストレスの原因や対処法を見つけることに役立ちます。
薬物療法では抗うつ薬が使用されることが多いです。
授乳中では薬に対して抵抗感を示す方もいます。
しかし、有効な薬物治療を受けることで早く産後うつを抜け出すことも可能になります。
また、授乳を続けることも可能な薬剤もあります。
産後うつだと思ったら?(対処法)
産後の感情に対応するための方法は、いくつかあります。
対処法
- できるだけ多く休息を取流ようにする
- すべてをやろうと思わない
- 家族や友人に助けを求めるようにする
- 自分の気持ちを他の人(夫やパートナー、家族、友人)に話すようにする
- 毎日シャワーを浴び、服を着替える
- 頻繁に外出するようにする
- 夫またはパートナーだけと過ごす時間を取るようにする
- ほかの母親と共通の経験や感情について話す
- うつ病の女性のための支援グループに参加する
新しく母親になった人にとって、疲労や集中力の低下、自分が母親でいてよいのかという不安があるのは普通のことです。
これらの感情は、通常は徐々に治ってきます。
そのことを認識するようにしましょう。
まとめ
「うつ病は甘え」
「育児ができないなんて母親失格」
「自分を犠牲にしてでも子供を優先すべきだ」
日本ではこういった母親神話がいまだに蔓延しており、多くのママ達がプレッシャーを感じているという問題があります。
母としての使命感や責任感は確かに必要ではありますが、子供は社会全体で守り育てていくべき存在です。
産後うつは決して母親としての覚悟のなさや甘え、子供への愛情のなさから発症する病気ではありません。
出産後の女性ホルモンの変化や環境の変化により、誰もがかかる可能性のある病気です。
産後うつは、治療が必要な病気になります。
ココがポイント
ひとりで悩まずに早めに周りの家族や友人、医療機関に相談するようにしましょう。
また周囲の理解と協力も必要となってきます。
パートナーや家族が「産後うつ」の可能性がある場合は、できるだけサポートすることや気分転換になる時間を作るようにしましょう。
家庭内で抱えていても解決できないことも多々あります。
専門の医療機関に相談することで解決する場合もありますので、できるだけ早めに相談するようにしましょう。