- 人工呼吸器のA/Cモードって?
- 人工呼吸器の基本知識を知りたい!
このような疑問にお答えします。
この記事を読むと「人工呼吸器の基本“A/Cモード”」について理解することができます。
子どもを看る上での知識を発信しております。

この記事を読んでほしい方
- 人工呼吸について理解を深めたい方
- A/Cモードを理解したい方
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【人工呼吸器】A/Cモードの基本
A/Cモードとは、人工呼吸器の設定のひとつです。
持続強制換気CMV (continuous mandatory ventilation) のうちの1つであり、よく使用されます。
簡単にお伝えすると「すべての1回換気が、人工呼吸器の決めたパターンで、換気されること」を意味します。
【A/Cモード】ケースを用いて考えよう
この症例で少し考えてみましょう。
- 7歳女児、体重20kg
- 開腹術施行され、術後管理目的でICUに入室中
- 入室後のバイタルサインは、安定して経過
- 鎮静薬を使用し、人工呼吸器管理中
- 抜管まではICU 管理の予定
この症例で呼吸器が正しく作動するためにはどのような設定が必要でしょうか?
コントロール変数として「従量式:VC」を選べば「1回換気量」「換気回数」の設定が必要になります。
要するに、1分間の間にどのくらいのガスを送り込んだら良いのか?というものを設定します。
1回換気量は、おおよそ10ml/kgで考えます。
そのためこの症例では
- 1回換気量は200ml、換気回数は10回/分に設定
- FiO2は、0.21~1.0の間
- PEEPは、5~10mmHgの間
このように設定します。

患者の病態によってPEEPは異なるため注意が必要。
術直後は、FiO2:1.0で管理しますが落ち着いた段階で下げていきます。
【人工呼吸器のモード】換気の成り立ち
人工呼吸器の設定では、換気を成り立たせる必要があります。
換気を成り立たせるために、1回の換気の目標をコントロール変数によって決め、吸気1サイクルがどのように成り立つのかを時相変数(phase variables)で決めます。
つまり呼気の1サイクルが成立させるために、コントロール変数に加えて時相変数の3つの因子を設定する必要があります。
時相変数の因子
- トリガー
- リミット
- サイクル
【人工呼吸器のモード】コントロール変数
コントロール変数とは、1回の吸気における達成目標を表しています。
人工呼吸器は、目標の吸気を達成するためにガスを気道内に送り込みます。


ではそれらについて説明していきます!
従量式 (VC)
モードのひとつである従量式(以下:VC)では
呼吸器は設定された一定量のガス(一回換気量に相当)を目標として、気道内にガスを送り込みます。
VC では、気道内抵抗や肺コンプライアンスが変化しても、指定した容量(=1回換気量)が変化することはありません。
1回換気量は一定ですが、気道内圧は気道のコンプライアンスが変わると高くなるため気道内圧のモニタリングが必要になります。
VCでは、1回換気量が保証されているというメリットはありますが、フローのパターンが固定されるということにより患者と呼吸器の不同調が起こる可能性があります。
従量式(VC)のポイント
- 1回換気量は設定した値となり、常に一定となる
- 吸気量が保証されている
- 気道内圧は様々な環境によって変化する(VCの欠点)
- 吸気フローのパターンが同一(VCの欠点)
従圧式(PC)
モードのひとつである従圧式(以下:PC)では
呼吸器は設定した一定の換気圧を目標として、気道内にガスを送り込みます。
通常は換気圧を設定します。
呼吸器によっては最高気道内圧を設定するものもあるので注意が必要です。
PCでは、最初に定めた気道内圧までは吸気圧は上昇し、ピーク気道内圧や平均気道内圧を一定に保つことができます。
1回換気量は異なるため、急激な呼吸状態の変化があった場合や患者の気道抵抗が高く、肺や胸郭のコンプライアンスが悪い場合には、1回換気量が低下して低換気となる恐れがあります。
そのため、分時換気量をモニターする必要があります。
従圧式(PC)のポイント
- 最高気道内圧は、設定した圧で一定である(PCの利点)
- 1回換気量は、環境によって変化する
- 吸気フローも比較的自由度が高い
- フロー、1回換気量は状況で変化する(PCの利点)
- コンプライアンスが悪いと1回換気量が低下する(PCの欠点)
【人工呼吸器のモード】時相変数(phase variable)
1回の換気が成立するためには、3つのステップ(時相変数)が必要でしたよね。
- トリガー:呼気の開始(呼気から吸気への移り変わり)
- リミット:吸気の維持
- サイクル:吸気の終了(吸気から呼気への移り変わり)
それぞれ説明していきたいと思います。
トリガー(trigger)
トリガーとは、呼吸器の場合「吸気を開始する」きっかけのことを意味しています。
吸気を開始できるのは、患者自身もしくは呼吸器になります。
人工呼吸器によって強制換気下で吸気を開始することを呼吸器(器械)トリガーと言います。

強制換気以外では、患者自身が自分で呼吸を開始することも出来ます。
そのことを患者トリガーと言います。

自発呼吸の確認
初めにあげた症例の続きから考えてみましょう。
- 7歳女児、体重20kg、呼吸器管理中
- この患者さんの術中に残っていた鎮静薬・筋弛緩薬が切れてきた様子。
- 医師から「この患者さんの自発呼吸は出てきましたか?」と聞かれた。
あなたはどうやって自発呼吸の有無を確認しますか?

まず身体所見では、明らかに呼吸回数が換気回数より多い場合は、自発呼吸があると考えます。
(例:呼吸回数20回/分、設定した換気回数:10回/分)
もし呼吸回数と設定した換気回数が同じくらいだった場合は?

もう1つの方法は、呼吸器のモニターを見ることです。

これは、患者の自発呼吸で息を吸うことで気道内圧がマイナスになることによって生じます。
呼吸器による呼吸開始の感知
呼吸器はどのようにして患者さんが呼吸を開始したことを「感知」するのでしょうか?
呼吸器が吸気努力を感知することをセンシング(sensing)と表現します。
気道内圧の変化、流速(フロー)の変化を感知することができ、それぞれに対応させて、圧トリガー、フロートリガーと呼ばれています。
圧トリガー
患者が息を吸い始め、設定したある一定値に気道内圧が下がると呼吸器が感知(センシング)して、呼吸器による送気が開始されます。
この圧トリガーの数値は、負の値で表示されます。
(例:-1cmH2O)
この値が小さいほど呼吸器は敏感に患者さんの自発呼吸を感知し、大きいほど鈍感になります。
フロートリガー
患者が息を吸い始め、回路内の流量の変化が起こるとそれを呼吸器が感知し、換気が開始されます。
圧トリガーでは吸気の開始前にフローの変化が生じていなないのとは対照的です。
これらのことから圧トリガーの場合には、設定された陰圧に達するまではフローの変化が発生しない状態であることが分かります。

トリガーは、感度をよく設定することが基本となっていますが、患者の体動や心拍動、呼吸器との不同調時の急激な変化を拾ってしまう場合があり、そのようなときには感度をあえて鈍くすることもあります。
ポイント
- 呼気のサイクルを始めることをトリガーという
→ 器械トリガー(自発呼吸がない場合)と患者トリガー(自発呼吸がある場合) - 設定した換気回数に基づいて、一定の時間が経つと吸気相を開始する時間トリガーは、器械トリガーに含まれる
- 患者トリガーは、圧トリガー、フロートリガーの2種類がある
リミット(limit)
呼吸器は、容量・気道内圧・フローのモニターを行います。
そしてそれらのパラメーターが一定値を超えないように「制限」することができます。
その制限のことをリミットと言います。
リミット制限は必ずしも1つだけではなく、複数のパラメーターを制限することも出来ます。
圧リミット (pressure limit)
圧リミットとは、ガスが流入する際に一定以上の気道内圧が生じないようにする仕組みのことです。
具体的には、気道内圧が設定値以上に上がると、排気弁が開いて呼気回路内から外へガスが排出されます。
これによって、肺に過剰な圧がかかり、肺障害が起きることを防ぐことができます。
容量リミット(volume limit)
容量リミットとは、設定容量を超えてガスが流入できなくなる仕組みのことです。
VCは全て容量リミットであると言えます。
フローリミット(flow limit)
フローリミットとは、一定以上のフローが流入できなくなる仕組みです。
サイクル (cycle)
吸気相はいつか終わり、呼気相に移行します。
呼吸器を考える上では、吸気相から呼気相へ移行することを「サイクル」と言います。
時間サイクル(time cycle)
PCでは、設定した吸気時間を基準として、吸気から呼気へサイクルします。
VCは容量コントロールかつ容量リミットですが、時間サイクルです。
つまり、必ずしも規定容量が入っていても吸気が終了せず、設定した吸気時間を経過して呼気へとサイクルするものが多いです。
フローサイクル(flow cycle)
フローサイクルは、フローが一定値に至ったとき、吸気から呼気にサイクルします。
フローは吸気の初期に最大値をとり、吸気の後半で減少してきます。
PS(=pressure support)では、一般にフローが最大25%に至った時点で、呼吸器が吸気の終わりとみなして、呼気相へサイクルします。
このフローサイクル値を変えることで吸気と呼気の比率を調整することができます。
- フローサイクル値をあげる(25%→50%)と吸気時間が短くなる
- フローサイクル値を下げる(25%→5%)と呼気時間が長くなる

まとめ
今回は、人工呼吸器の設定を理解するためにA/Cモードの基本を説明しました。
しっかり用語や設定の意味を理解して臨床で取り組みましょう。
人工呼吸器に関しては、こちらでまとめています。