集中治療

人工呼吸器の基本知識【 A/Cモード 】

こんにちは。
小児集中治療室に勤務する看護師のpi ✿︎(@shinkan0607) です。
子どもを看る上での知識を発信しております。

前回は、人工呼吸器の理解に必要な用語について説明しました。

 

人工呼吸器と聞くと難しく思ってしまいますよね?

 

今回は、基本的なモードの理解をするとともに詳しい用語の説明をしていきたいと思います。

 

A/Cモードの基本の理解

A/Cモード (assist control mode) は、持続強制換気CMV (continuous mandatory ventilation) のうちの一つです。

すべての1回換気が、人工呼吸器の決めたパターンで、換気されることを意味します。

7歳女児、体重20kg
開腹術施行、術後管理目的でICUに入室となった。
入室後のバイタルサインは安定して経過。
鎮静薬を使用し、人工呼吸器管理中。
抜管まではICU 管理となる。

上記のケースで呼吸器が正しく作動するためにはどのような設定が必要でしょうか?

コントロール変数として「従量式:VC」を選べば「1回換気量」「換気回数」の設定が必要になります。

 

要するに、1分間の間にどのくらいのガスを送り込んだら良いのか?というものを設定します。

1回換気量は大体10ml/kgで考えるとします。

ココがポイント

ケースの20kgの患者であれば…
■ 1回換気量200mlとし、換気回数を10回/分に設定
■ FiO2は、0.21~1.0の間
■ PEEPは、5~10mmHgの間

このように設定していきます。

患者の病態によってPEEPは異なるため注意が必要です。

術直後は、FiO2:1.0で管理しますが落ち着いた段階で下げていきます。

 

換気の成り立ち

1回の換気を成り立たせるためには、1回の換気の目標をコントロール変数によって決め、吸気1サイクルがどのように成り立つのかを時相変数(phase variables)で決めます。

つまり呼気の1サイクルが成立するには、コントロール変数に加えて時相変数の3つの因子を設定します。

さらに詳しく

時相変数の因子
①トリガー ②リミット ③サイクル

コントロール変数

コントロール変数とは、1回の吸気における達成目標を表しています。

人工呼吸器は、目標の吸気を達成するためにガスを気道内に送り込みます。

ではその目標とはなんでしょうか?


容量・圧・フロー・時間のパラメーターのうち1つの目標値を選び、その値を達成することです。

 

従量式 (VC)

VCでは、呼吸器は設定された一定量のガス(一回換気量に相当)を目標として、気道内にガスを送り込みます。

VC は、気道内抵抗や肺コンプライアンスが変化しても、指定した容量(=1回換気量)へ変化することはありません。

しかし、1回換気量は一定ですが、気道内圧は気道のコンプライアンスが変わると高くなるため気道内圧のモニタリングが必要になります。

またVCでは、1回換気量が保証されているというメリットはありますが、フローのパターンが固定されるということにより患者と呼吸器の不同調が起こる可能性があります。

ココがポイント

  • 一回換気量は設定した値となり、常に一定である
  • 吸気量が保証されている
  • 気道内圧は様々な環境によって変化する(VCの欠点)
  • 吸気フローのパターンが同一(VCの欠点)

従圧式(PC)

従圧式=圧コントロール(pressure control)のモードだと、呼吸器は設定した一定の換気圧を目標として、気道内にガスを送り込みます。

通常は換気圧を設定しますが、呼吸器によっては最高気道内圧を設定するものもあるので注意が必要です。

PCでは、最初に定めた気道内圧までは吸気圧は上昇し、ピーク気道内圧や平均気道内圧を一定に保つことができます。

1回換気量は異なるため、急激な呼吸状態の変化があった場合や患者の気道抵抗が高く、肺や胸郭のコンプライアンスが悪い場合には、1回換気量が低下して低換気となる恐れがあります。

そのため、分時換気量をモニターする必要があります。

ココがポイント

  • 最高気道内圧は、設定した圧で一定である(PCの利点)
  • 1回換気量は、環境によって変化する
  • 吸気フローも比較的自由度が高い
  • フロー、1回換気量は状況で変化する(PCの利点)
  • コンプライアンスが悪いと1回換気量が低下する(PCの欠点)

 

時相変数(phase variable)

1回の換気が成立するためには、3つのステップ(時相変数)が必要です。

step
1
トリガー

吸気の開始(呼気から吸気への移り変わり)

step
2
リミット

吸気の維持

step
3
サイクル

吸気の終了(吸気から呼気への移り変わり)

トリガー(trigger)

トリガーとは、呼吸器の場合「吸気を開始する」きっかけのことを意味しています。

吸気を開始できるのは、患者自身か呼吸器になります。

呼吸器が強制換気下で吸気を開始することを呼吸器(器械)トリガーと言います。

例えば、12回/分に換気回数を設定した場合は、5秒毎に呼吸器による吸気サイクルが開始されます。

患者自身が脳幹の呼吸中枢から命令を受けて、自分で呼吸を開始することも出来ます。

そのことを患者トリガーと言います。

この患者自身が自分で呼吸サイクルを開始していることを「自発呼吸がある」と臨床では表現しています。

 

自発呼吸の確認

ケースの続きから考えていきましょう。

先ほどの患者さんの術中に残っていた鎮静薬・筋弛緩薬が切れてきたようです。
医師から「この患者さんの自発呼吸は出てきましたか?」と聞かれました。

 

あなたはどうやって自発呼吸の有無を確認しますか?

 

自発呼吸の有無は、身体所見や呼吸器モニターから知ることができます。

まず身体所見では、明らかに呼吸回数が換気回数より多い場合は、自発呼吸があると考えて良いです。
(例:呼吸回数20回/分、設定した換気回数:10回/分)

 

では、もし呼吸回数と設定した換気回数が同じくらいだった場合はどうしたらいいでしょうか?

 

例えば、一時的に換気回数を極端な低い値(2回/分)などにして、患者の胸郭の上下運動があるか確かめるのは1つの方法です。

もう1つの方法は、呼吸器のモニターを見ることです。

自発呼吸が生じる際には、このようにモニター上で吸気サイクルの始まりに凹みが生じます。

これは、患者の自発呼吸で息を吸うことで気道内圧がマイナスになることによって生じます。

 

呼吸器による呼吸開始の感知

呼吸器はどのようにして患者さんが呼吸を開始したことを「感知」するのでしょうか?

呼吸器が吸気努力を感知することをセンシング(sensing)と表現します。

気道内圧の変化、流速(フロー)の変化を感知することができ、それぞれに対応させて、圧トリガー、フロートリガーと呼ばれています。

圧トリガー

患者が息を吸い始め、設定したある一定値に気道内圧が下がると呼吸器が感知(センシング)して、呼吸器による送気が開始されます。

この圧トリガーの数値は、負の値で表示されます。
(例:-1cmH2O)

この値が小さいほど呼吸器は敏感に患者さんの自発呼吸を感知し、大きいほど鈍感になります。

フロートリガー

患者が息を吸い始め、回路内の流量の変化が起こるとそれを呼吸器が感知し、換気が開始されます。

圧トリガーでは吸気の開始前にフローの変化が生じていなないのとは対照的です。

これらのことから圧トリガーの場合には、設定された陰圧に達するまではフローの変化が発生しない状態であることが分かります。

したがって、フロートリガーの方が呼吸仕事量が小さく、特に患者に内因性のPEEPが生じているときに有効であると言われています。

 

トリガーは、感度をよく設定することが基本となっていますが、患者の体動や心拍動、呼吸器との不同調時の急激な変化を拾ってしまう場合があり、そのようなときには感度をあえて鈍くすることもあります。

ココがポイント

  • 呼気のサイクルを始めることをトリガーという
     → 器械トリガー(自発呼吸がない場合)と患者トリガー(自発呼吸がある場合)
  • 設定した換気回数に基づいて、一定の時間が経つと吸気相を開始する時間トリガーは、器械トリガーに含まれる
  • 患者トリガーは、圧トリガー、フロートリガーの2種類がある

リミット(limit)

呼吸器は、容量・気道内圧・フローのモニターを行います。

そしてそれらのパラメーターが一定値を超えないように「制限」することができます。

その制限のことをリミットと言います。

リミット制限は必ずしも1つだけではなく、複数のパラメーターを制限することも出来ます。

圧リミット (pressure limit)

圧リミットとは、ガスが流入する際に一定以上の気道内圧が生じないようにする仕組みのことです。

具体的には、気道内圧が設定値以上に上がると、排気弁が開いて呼気回路内から外へガスが排出されます。

このことによって、肺に過剰な圧がかかり、肺障害が起きることを防ぐことができます。

 

容量リミット(volume limit)

容量リミットとは、設定容量を超えてガスが流入できなくなる仕組みのことです。

VCは全て容量リミットであると言えます。

 

フローリミット(flow limit)

フローリミットとは、一定以上のフローが流入できなくなる仕組みです。

 

サイクル (cycle)

吸気相はいつか終わり、呼気相に移行します。

呼吸器を考える上では、吸気相から呼気相へ移行することを「サイクル」と言います。

 

時間サイクル(time cycle)

PCでは、設定した吸気時間を基準として、吸気から呼気へサイクルします。

また、VCは容量コントロールかつ容量リミットであるが、時間サイクルです。

つまり、必ずしも規定容量が入っていても吸気が終了せず、設定した吸気時間を経過して呼気へとサイクルするものが多いです。

フローサイクル(flow cycle)

フローサイクルは、フローが一定値に至ったとき、吸気から呼気にサイクルします

フローは吸気の初期に最大値をとり、吸気の後半で減少してきます。

PS(=pressure support)では一般にフローが最大25%に至った時点で、呼吸器が吸気の終わりとみなして、呼気相へサイクルします。

このフローサイクル値を変えることで吸気と呼気の比率を調整することができます。

例えば
フローサイクル値をあげる(25%→50%)と吸気時間が短くなる
フローサイクル値を下げる(25%→5%)と呼気時間が長くなる
フローサイクルを適切にすることによって、不要なauto-peepの発生を防げる場合があるね。

ココがポイント

吸気の第1ゴールを設定する。
・容量コントロール
・圧コントロール
吸気相に影響を与える因子として以下のものがある。
・吸気相を開始させるトリガー
・吸気相で超えてはいけない制限値であるリミット
・吸気相を終えて呼気相に移るためのサイクル

 

まとめ

今回は、人工呼吸器の設定を理解するためにA/Cモードの基本を説明しました。

用語がたくさんあり難しく思ってしまいますが、一つずつ理解することで不安も軽減されます。

しっかり用語や設定の意味を理解して臨床で取り組みましょう。

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