集中治療

小児のショック

こんにちは。
小児集中治療室に勤務する看護師のpi ✿︎(@shinkan0607) です。
子どもを看る上での知識を発信しております。

 

小児救急やPICUではショックの知識が重要となりますね。

小児は状態の変化が早く、良くなるのも悪くなるもの早いと言われています。

実際に私も臨床の場で、ショック対応を多くしてきました。

緊急時はどうしても慌ただしく過ぎてしまい、冷静な判断やアセスメントが求められます。

臨床で冷静に対応ができるようにショックの知識を習得しましょう!



ショックの定義

ショックとは、循環系の異常により組織の酸素需要に酸素供給が満たない状態のことを言います。

これにより細胞の代謝障害や臓器障害が起こり、患者にとって生命の危機的状況となります。

要するに、酸素がたくさん必要な時に十分に酸素を身体に取り込むことができずにいる状態で、酸素不足が生じている状態のこと。ショックそのものの定義は、血圧測定値とは無関係です。

 

ショックの病態生理

心肺系の主要な機能は、体組織に酸素を供給し、細胞代謝による代謝副産物(主にCOを除去することです。

組織の需要に対して酸素供給が不十分な場合、細胞は嫌気性代謝によりエネルギーを産生しますが、同時に乳酸が産生されます。

嫌気性代謝では限られた細胞機能しか維持できない可能性があります。酸素供給が直ちに回復しないと、臓器機能障害すなわち臓器不全に陥ります。

組織へ酸素供給の要素

組織への酸素供給が十分であるかは、以下の因子に左右されます。

・血液中の酸素含量が十分にあること

・組織への血流(心拍出量)が十分であること

・組織への血流の分布が適切であること

血中の酸素含量は、ヘモグロビン濃度とヘモグロビン酸素飽和度(SaO2によって決まります。

組織への血流が十分であるかは、心拍出量及び血管抵抗に左右されます

適切な血液分布は、判定臓器へ血液を供給する血管内径によって決まります。この特性は、血管抵抗と呼ばれています。

血管抵抗の異常な増大(血管収縮)または異常な低下(血管拡張)が生じると、心拍出量が十分でも血流の分布が妨げられる可能性があります。

 

代償機序

ショックの状態に陥ると、代償機序により重要臓器への酸素供給を維持します。

代償機序には以下のものが含まれます。

・心拍数の増加(頻脈)

・体血管抵抗(SVR)の増加(血管収縮)

・心収縮力の増加(心筋収縮力)

・静脈平滑筋の増加

心拍出量維持のために最初に生じる身体反応は、心拍数の増加(頻脈)です。

頻脈によって、ある程度まで心拍出量を増加させることができます。

心拍が早くなればなるほど心室充満時間は短くなり、1回拍出量や心拍出量が低下します。心拍出量の低下により、組織への酸素供給量は減少します。

組織への酸素供給量が減少すると、非重要臓器や組織(皮膚、骨格筋、腸管、腎臓など)から重要臓器(脳、心臓など)へ血流が再分配されたり、シャントが生じます。

このため臨床的には、末梢循環の低下(CRTの延長、四肢冷感、末梢脈拍触知不良)、腸管や腎臓への灌流減少(尿量低下)などが認められます。

血圧への影響

心拍出量が低下しても、SVR が大きければ血圧は維持されます。

ショック状態の小児では、この代償機序が非常に効果的に作用するため、収縮期血圧は初期には正常かやや高めに維持されることがあります。

SVR が高いと拡張期血圧は上昇するため、収縮期血圧と拡張期血圧の差である脈圧は低下することが多いです。

心拍出量が不十分であれば、血圧が正常であっても組織灌流は損なわれます

乳酸アシドーシスや終末臓器の機能不全などの組織灌流不良の特徴は、血圧が正常でも発現します。

SVRが高くなって限界に達すると、血圧の低下が始まります。そうなった時点で、重要臓器への酸素供給が大きく損なわれます。

臨床的特徴としては、

代謝性アシドーシス・意識障害・尿量減少

などが認められます。

最終的に心筋への酸素供給が不十分になれば、

心筋機能障害・1回拍出量の低下・低血圧

が引き起こされます。

これらの障害は、急速に心血管虚脱、心停止、回復不能な終末臓器障害につながる可能性があります。

 

ショックの判定

ショックの重症度は、収縮期血圧への影響によって表されることが多いです。

ショックの段階として、急性の循環障害に対して代償機構により血圧を維持している代償性ショックと代償機能が破綻して低血圧を呈している非代償性ショック(低血圧性ショック)に分けることができます。

低血圧性ショックから心停止までの時間は、数分の可能性があると言われています。

そのため代償性ショックの段階で、ショックの兆候を察知して原因検索・介入することが現場には求められます。

代償性ショック

収縮期血圧は正常範囲内にあるが、組織灌流が不十分な兆候がある場合、その小児は代償性ショックの状態です。

この段階でのショックは、重要臓器への酸素の栄養の供給が損なわれていても、血圧の維持は可能です。

酸素供給が制限されると、脳や心臓への血流を正常に維持しようとする代償機序が働きます。

低血圧性ショック

収縮期血圧と組織灌流を維持しようとする生理学的な機構が機能しなくなると低血圧となります。

小児の状態悪化を示す臨床的特徴の一つに、脳幹流の減少による意識レベルの低下があります。

低血圧は、ほとんどのタイプのショックで晩期に見られる所見で、心停止が差し迫っていることを示している可能性があります。

タイプ別のショックの判定

ショックは4つの分類によって、病態に合わせた治療と対応の明確化が図られています。

しかし、起きているショックが複合的な病態を呈する場合もあるため注意が必要です。

また、ショックの初期治療目的は、輸液蘇生により循環血液量を維持・回復させ組織灌流を改善させることです。

そのためには大量輸液の急速投与が必要となります。一方で大量輸液に伴う弊害も生じる可能性があります。

ショックからの回復に必要な輸液量を最小限にとどめ、二次的侵襲を回避するためにもショックの早期発見と早期介入、繰り返しの全身評価が求められてきます。

ショックを認識し、治療の優先順位を決めます。

治療を開始するまでが早ければ早いほど

小児が良好な回復を得る可能性が高くなります!

 

循環血液量減少性ショック

世界的にみて、小児のショックの原因で最も多く見られるのが循環血液量減少です。

下痢による水分喪失が循環血液量減少性ショックの最大原因であり、乳児死亡の主要原因となっています。

循環血液量減少性ショックとは、循環血液量が低下したことにより全身へ灌流する血液量が十分に得られなくなった状態のことです。

小児は、発達段階的に口渇を訴えることや自ら飲水行動を取れない場合があることが考えられます。

また体重あたりに占める細胞外液の割合が多いため、少しの水分喪失が脱水に繋がること、感染性胃腸炎などに罹患しやすいことなども原因として考えられます。

ぐったりとしている時や調子が悪い時ほど、どの程度水分摂取できているのかを確認する必要があるよ!

 

血液分布異常性ショック

血液分布異常性ショックは、血管拡張病態により相対的に循環血液量が減少し、十分な組織灌流が得られなくなった状態のことです。

敗血症性ショックやアナフィラキシーショックが具体的に挙げられます。

血液分布異常性ショックに陥った小児では、早期にSVRの低下と皮膚への血流増加が認められる場合があります。これにより四肢が温かくなります。

 

心原性ショック

心原性ショックは、心機能の異常によって心拍出量が低下し、十分な組織灌流が得られなくなった状態によって引き起こされます。

先天性心疾患や心筋炎、不整脈などが原因となります。

循環血液量減少性ショックで脳や心臓への灌流を維持するような同様の代償機序が心原性ショックでは有害となる場合が多いです。

心筋には酸素が必要となるため、重度または断続的なショックに陥った小児は、ほぼ全てが最終的に心筋へ酸素供給量が酸素需要に対して不足する可能性があります。

いったん心筋機能が低下してしまうと、通常は小児の臨床状態が急速に悪化します。そのため、早期介入が大切です。

 

心外閉塞・拘束性ショック

心外閉塞・拘束性ショックは、心嚢の圧迫や血管系閉塞によって十分な組織灌流が得られなくなった状態のことです。

心タンポナーデや緊張性気胸などが原因となります。

血流の物理的障害により、心拍出量の低下、不十分な組織灌流、代償的なSVRの上昇が引き起こされます。

心臓の周囲や血管に原因があるため、早期にその原因を取り除く必要があります。すぐに処置になる場合が多いので準備しましょう!


まとめ

ショックの急性期治療では、組織への酸素供給を回復させ、組織灌流と代謝需要のバランスを改善することを重点にして治療を行います。

それぞれの特性を理解して、ただちに判断・介入を行うことが重要です。

「何かおかしいな?」と思った際には、医師と共同して介入できるようにしましょう。

 

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■ 看護師 / 小児集中治療 ■ 小児科ナース / PALS 資格所有 ■ 気付けば中堅クラスになっていました ■ 子どもを看るうえで必要な知識を発信します

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