こんにちは。
小児集中治療室に勤務する看護師のpi ✿︎(@shinkan0607) です。
子どもを看る上での知識を発信しております。
今回は、小児看護で必要となる「抑制」についてお話しします。
抑制と聞くと「可哀想、心配」と思いますよね。
しかし、患者の安全のためには必要な場合も多くあります。
その理由について説明したいと思います。
タップして目次を表示
重症小児患者で必要となる安全管理とは?
集中治療室に入室している子どもは、生命の危機的状況や大手術後などで重篤な状態である場合が多いです。
生命維持のための医療機器やモニター類が多数装着されており、チューブやルート類も多く留置されています。
PICUに入室している子どもたちは、このように非日常な環境下に置かれることになります。
そして人工呼吸器による呼吸管理、吸引や創部処置などの治療に伴う身体的・心理的苦痛を感じています。
その中で子どもは、発達段階による状況理解の困難さや、症状や薬剤による不穏や混乱、せん妄などが要因となり、危険行動を起こすおそれがあります。
医療機器やモニター類、チューブや点滴類が外れてしまうと、子どもの生命維持に影響を及ぼす可能性もあり、安全を確保するためにきめ細やかな観察と確実なケアが必要となります。
子どもの権利
子どもの権利に関して、下記のように定義されています。
われらは、日本国憲法の精神にしたがい、児童に対する正しい観念を確立し、すべての児童の幸福をはかるために、この憲章を定める。
児童は、人として尊ばれる。
児童は、社会の一員として重んぜられる。
児童は、よい環境の中で育てられる。一 すべての児童は、心身ともに健やかにうまれ、育てられ、その生活を保障される。
二 すべての児童は、家庭で、正しい愛情と知識と技術をもつて育てられ、家庭に恵まれない児童には、これにかわる環境が与えられる。
三 すべての児童は、適当な栄養と住居と被服が与えられ、また、疾病と災害からまもられる。
四 すべての児童は、個性と能力に応じて教育され、社会の一員としての責任を自主的に果たすように、みちびかれる。
五 すべての児童は、自然を愛し、科学と芸術を尊ぶように、みちびかれ、また、道徳的心情がつちかわれる。
六 すべての児童は、就学のみちを確保され、また、十分に整つた教育の施設を用意される。
七 すべての児童は、職業指導を受ける機会が与えられる。
八 すべての児童は、その労働において、心身の発育が阻害されず、教育を受ける機会が失われず、また、児童としての生活がさまたげられないように、十分に保護される。
九 すべての児童は、よい遊び場と文化財を用意され、悪い環境からまもられる。
十 すべての児童は、虐待・酷使・放任その他不当な取扱からまもられる。あやまちをおかした児童は、適切に保護指導される。
十一 すべての児童は、身体が不自由な場合、または精神の機能が不充分な場合に、適切な治療と教育と保護が与えられる。
十二 すべての児童は、愛とまことによつて結ばれ、よい国民として人類の平和と文化に貢献するように、みちびかれる。児童憲章 引用:文部科学省
これらをもとに各病院が「こども憲章」として掲げております。
このように子どももひとりの人間として医療を受ける権利があり、それに準じた対応が必要となります。
重症小児患者の安全確保
実際に臨床では「安全確保」のためにどのようなことに注意しているのでしょうか?
子どもへの説明と理解を得る
子どもは成長発達の途上にありますが、知能能力や状況に合わせて説明を行うことで理解と納得を得られることもあります。
そのため可能な限りで事前にプレパレーションを行うことやがんばったことを褒めるなどの工夫を行ないます。

家族への適切な情報提供と協力を得る
ベッドサイドで面会している家族は、多くの医療機器に取り囲まれた状況の子どもに手を出すことができず、じっとしている人も少なくないです。
家族の思いを傾聴しながら子どもがどういった状況にあるのか、今後どうなっていくのかを理解できるように説明を行う必要が医師からの説明を受けるための橋渡しや家族の疑問や不安を引き出す役割を看護師としては担っており、意識した声かけなども重要となります。
また子どもは家族がそばにいることで安心します。
不快や痛みを伴う処置でも家族の協力を得てスムーズに実施することができる場合もあります。
子どもの手を握ることや触って良い場所を伝えるなどのスキンシップを家族へ促し、一緒にケアを実施できる環境を整えます。
環境調整
子どもは入院すると同時に日常とはかけ離れた環境になってしまいます。
そのため集中治療室に入室している場合でも、できる限りの普段の生活に近い環境の調整を行い、子どもの不安や苦痛を緩和することが大切です。
ココがポイント
実際にできること!
・音や照明の調整
・治療や処置の工夫
・睡眠と活動のバランスの考慮
・家族の面会、プライバシーの保護
・不必要なチューブ類は抜去できるように検討する
このような工夫を行うことで、子どもの安全が確保されることに繋がります。
また子どもの基本的なニーズを満たし、日常生活リズムが整うように工夫を行う必要があります。
抑制の判断と方法
集中治療では、子どもの安全な管理のために身体抑制が必要となる場合もあります。
特に物事の理解が十分でない子どもは、不本意に重要デバイスを自己抜去してしまう恐れがあるからです。
自己抜去が生じてしまうと再留置が必要になることもあり、それに伴い子どもに苦痛や不快感を与えることになってしまいます。
これらを防ぐためにも、安全管理が重要となります。
抑制の定義と子どもへの影響
抑制は、「衣類又は綿入り帯を使用して、一時的に当該患者の身体を拘束し、その運動を抑制する行動の制限を言う」と定義されています。
引用元:厚生労働省
子どもの安全の確保が困難である時、安易に抑制を選択せず、医療チームで原因・誘因・解決策を検討する必要があります。
集中治療を受けている子どもも例外ではなく、権利を尊重した医療や看護を提供し、最善の利益を保証しなければいけません。
動くことは、子どもにとって日常生活や成長発達の基盤であり、重要です。
動きの制限によって子どもの身体、心理、発達面に大きな影響を及ぼす恐れがあることを理解しておく必要があります。
抑制の適応基準
抑制が必要かどうかを判断する基準として、身体拘束予防ガイドラインの「身体拘束の三原則」が挙げられる。
個人で判断するのではなく、医療チームで話し合い検討することや施設での方針を明らかにしておくことが必要となります。
危険行動の予防として抑制を使用する前に、その行動を起こす原因を分析し、可能な限り取り除く努力も行います。
抑制の種類
実際に臨床で使用されている身体抑制には、物理的抑制と薬物的抑制があります。
物理的抑制では、以下のものが挙げられます。
子どもの理解度によって抑制の方法や程度は検討していきます。
子どもは突発的な動きも多く、予期せぬ状況でチューブ類を自己抜去してしまうことがあります。
そのため、子どもの行動パターンを観察し、予測して対応するようにします。
抑制時のケア
実際に抑制を実施する際には、DVDや絵本、人形などを用いてプレパレーションを行うなど発達段階に応じた説明を行います。
抑制の目的や必要性、具体的な方法、期間などもわかりやすく説明し、どんな状況になるのか、何を頑張れば良いのかについて子どもがイメージ化し理解できるように支援します。
同時に家族にも必要性について説明を行い、協力を得られるようにします。
また必要性をアセスメントし、定期的に抑制を外して観察を行うことも大切です。
子どもの気分転換のために外す時間を設ける、家族に協力をしてもらい外す時間を設けるなどの工夫をしています。
まとめ
重症小児患者を安全に看るためには、子どもと両親への説明や抑制などが必要となってきます。
その子の発達段階に合わせた介入を検討し、抑制を実施する際にも必要性を常に考えて介入していきます。
以上のことに注意して、臨床で取り組んでいくようにしましょう。