こんにちは。
小児集中治療室に勤務する看護師のpi ✿︎(@shinkan0607) です。
子どもを看る上での知識を発信しております。
今回は、人工呼吸器管理中に必要となる看護のポイントをお伝えします。
ここでわかること
- 人工呼吸器の生体へ与える影響
- 気管チューブの管理方法と注意点
- 小児の肩枕の必要性
- 小児の鎮静・鎮痛薬の使用について
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人工呼吸器管理の特徴
【呼吸障害の種類と子どもへのケア】でもお話ししましたが、呼吸障害は「呼吸窮迫状態」と「呼吸不全状態」に分けられます。
SpO2や血液ガス分析は、介入に対する評価には有用です。
しかし人工呼吸器の適応を判断する上で最も重要なのは、呼吸努力の増悪やそれに伴う循環障害や意識障害といった臨床的所見やその変化になります。
人工呼吸器の適応は、
- 酸素化障害
- 換気能障害
- 呼吸仕事量の減少
- 深鎮静を要する状態
などが挙げられます。
人工呼吸器の利点と欠点は、以下の通りです。
人工呼吸器の利点
確実な気道確保ができる
気管吸引が可能
確実な酸素投与ができる
換気量を維持することができる
人工呼吸器の欠点
上気道のバイパス 気道損傷のリスク 患者の苦痛が生じる 鎮静鎮痛が必要となる
人工呼吸器と生体への影響
自然呼吸の特徴は、以下の通りです。
- 横隔膜と肋間筋の収縮により胸腔内に陰圧が生じることにより吸気が行われる
- 肺の弾性に応じて呼気は行われる
- 呼気時に気道内は陽圧になり、胸腔内は陰圧のまま
一方で人工呼吸では、以下の特徴があります。
- 人工気道を介して吸気ガスを送り込み、その圧で肺が膨らむ(吸気)
- 肺の弾性に応じて呼気を行う
- 呼気終末陽圧(PEEP)をかけることで肺の虚脱を防ぐ
- 荷重側肺障害により無気肺も生じやすい
- 血流は背側に増加し、換気血流不均衡を起こしやすい
このように人工呼吸では、吸気時も胸腔内は陽圧となり、生体にさまざまな影響を与えます。
人工呼吸器の生体への影響
|
メリット |
デメリット |
呼吸器系 | 酸素化の改善
換気の改善 呼吸仕事量の軽減 呼吸の担保 気道確保 |
呼吸器関連肺障害
シャント効果による酸素化増悪 荷重側肺障害 呼吸筋萎縮 呼吸器関連肺炎 声門下狭窄 肺痰機能低下 |
循環器系 | 静脈還流減少による前負荷軽減
腹腔内外圧較差増大による後負荷軽減 |
静脈還流量減少
心拍出量減少 尿量減少 浮腫 |
脳神経系 | 頭蓋内圧上昇
せん妄 |
|
消化器系 | 消化管障害
呑気による胃拡張 |
|
その他 | 精神的ストレス
皮膚障害 |
気管チューブのサイズと挿入長
小児では、カフなし気管チューブとカフ付き気管チューブが用いられています。
気管-気管チューブ間のリークが最小限になるサイズが選択されます。
挿入長は、「中立位で気管中部に先端が位置」するように固定されます。
胸部X線上で「第2・第3胸椎間」「気管分岐部より0.5cm頭側と両側鎖骨中線の間」などが目安となります。
また、カフ付き気管チューブではカフによる声帯損傷の可能性を考慮して、挿入長を調整する必要があります。

小児の気管チューブのサイズ選択は、以下を参考にしています。
緊急時に大切になるので意識してみましょう!
小児の気管チューブのサイズ選択(ID:mm)
|
カフ付き気管チューブ |
カフなし気管チューブ |
新生児〜1歳 |
3.0 | 3.5 |
1歳〜2歳 |
3.5 |
4.0 |
2歳以上 |
年齢/4+3.5 |
年齢/4+4.0 |
カフ圧とリーク
解剖学的・生理学的特徴から今までは、小児では「カフなしの気管チューブ」が用いられてきました。
しかし近年では、カフ付き気管チューブの安全性が示されており、小児でもカフ付きの気管チューブを使用するようになっています。
カフ付き気管チューブは、気管-気管チューブの間のリークを最小限にすることができます。
リークが生じることで起こること
換気量の低下 分泌物の誤嚥 呼吸器との同調不良
カプノグラフィ(EtCO2)や換気量モニターの信頼性低下
成人での適正カフ圧は、20~30mmH2Oとされていますが、小児の適正カフ圧は成人より低いと考えられており、10~20mmH2Oでリークが最小限となり十分に役割を果たすことができると言われています。
カフ圧は、中立位と比べ頸部の伸展位では低下し、屈曲位では上昇するとされています。

気管チューブの固定
小児は、分泌物が多く、首振りなどの体動も激しいため、気管チューブの固定用テープは緩みやすくなります。
また特に乳幼児では、相対的に気道が短いため、1~3cm変わると計画外抜管や片肺挿管になる恐れがあります。
経鼻挿管は、経口挿管に比べると固定性は良くなり、患者の不快感も少ないと考えられています。
しかし鼻孔周囲の皮膚損傷を起こしやすいことに留意して、観察・皮膚保護に努める必要があります。
人工呼吸器管理中、肩枕の使用はなぜ?
小児は頭部が前屈しやすいため、気道を最大限に開放し、気管チューブを適切な位置で保持する必要があります。
気道を最大限に開放するためには、正中位で少し頸部を伸展、頭部を後屈させたスニッフィングポジションが有効であると言われています。
スニッフィングポジションとは、肩関節の前面と外耳孔が水平面で同じ高さになるものです。
スニッフィングポジションを取りやすくするためには、年齢や体格に応じて枕を入れる位置を調整する必要があります。
肩枕を入れる目安
2歳以下の小児:肩から背中にかけて枕を入れる
3歳以上で外傷が疑われない時:後頭部に薄い枕を入れる
人工呼吸器管理中の子どもの啼泣への対応、どうする?
挿管管理中の子どものママ
この子ずっと泣いてるんですけど…どこか痛いのでしょうか?
このような質問をベッドサイドでご家族からいただきます。
挿管管理中の子どもを見ることに慣れていない家族からしたらびっくりしますよね。
もちろん挿管中であっても子どもが啼泣している時は、私たち看護師も子どもからの重要なサインとして何が起こっているのか考えます。
挿管中に子どもが泣き続けていた場合、どのようなことを考えたらいいのでしょうか?
小児の啼泣は、満足・苦痛・怒り・悲嘆など満たされない甘えの欲求の伝達手段とされています。
言葉で伝えることのできない子ども達ならではのことですよね。
また周囲の環境の変化や緊張感、苛立ちにも反応していると考えられています。
例えば、ご家族が不安な顔をしていたら子どもも泣いていたりしますね。
挿管中の子どもの啼泣は、以下のことを引き起こしてしまいます。
- 人工呼吸器との同調性を損なう
- ファイティングを引き起こし、気道内圧を上昇させる
- 分泌物を増加させる
- 咳き込みや気管吸引による刺激が啼泣を増加させる
- 啼泣時の体動や咳き込みが事故抜管の要因となってしまう
- 啼泣の持続は心負荷の増大となる
- 啼泣に伴う息こらえは、低酸素血症や徐脈の原因となる
そのため人工呼吸器管理を行なっている子どもにとって、適切な鎮静薬の投与は必要不可欠です。
しかし安易に鎮静薬を増量してしまうことは、重要なサインを見逃すことにも繋がるため、十分な原因検索や対応なしに行うべきではありません。
啼泣の原因として考えられること
生理的なもの:空腹、眠い、夜泣き
苦痛によるもの:呼吸が苦しい、疼痛、ドレーンやチューブの不快感、刺激、体勢が不快、創部痛、おむつの汚染、暑い、寒い
怒りによるもの:抑制が苦痛、自分の欲求が伝えられない
悲嘆によるもの:寂しさ、不安
また上記のような原因へは対応を行い、子どもを落ち着かせるように対応しましょう!
人工呼吸器管理中の鎮静・鎮痛
1年目看護師
小児の鎮静・鎮痛の評価って難しいですよね。
どういったことに注意すればいいですか?
こんな疑問が後輩看護師からありました!とってもいい質問ですね!
小児の人工呼吸器管理中には、苦痛の軽減・事故抜管の予防・心的外傷の予防のために鎮静・鎮痛管理は不可欠となります。
鎮痛薬及び鎮静薬は、副作用として呼吸・循環抑制をきたすため、適切なモニタリングを行いながら使用する必要があります・
小児の鎮静評価
子どもの至適鎮静レベルを適切に評価するためには、鎮静スケールを用いることが有用です。
スケールを用いることで医療スタッフによる認識の違いを少なくすることが可能となるからです。
小児の鎮静スケールとしては、SBSやRASSなどが用いられています。
小児の疼痛評価
幼い子どもは、痛みを他者に伝えることができませんよね。
小児は、痛みを言語によって伝えることが難しいです。
人工呼吸器管理中の小児では、痛みに対する生理学的反応や行動学的反応を観察することが重要となります。
また鎮痛薬の効果を評価するには、疼痛スケールを用いることが有用です。
小児で使用されている疼痛スケールは、主観的に評価できるフェイススケールや客観的に評価できるCHEOPSやBPSなどがあります。
学童期の子どもには、成人と同様にVASやNRSを用いることもできます。
まとめ
小児の人工呼吸器管理中の看護のポイントを抑えることはできましたか?
子どもの一番近くにいる看護師だからこそ知っておくべき管理のポイントをまとめました。
臨床で活かしていきましょう!
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