- ウィーニングの時に注意することは?
- ウィーニング中は何を観察する?
この記事を読むと人工呼吸器のウィーニングについて理解することができます。
子どもを看る上での知識を発信しております。

人工呼吸器のウィーニングについて理解することで抜管前の評価がしっかりとできるようになります。
この記事を読んでほしい方
- ウィーニングについて知りたい看護師さん
- ウィーニング中の観察ポイントを知りたい看護師さん
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人工呼吸器のウィーニングとは
人工呼吸器のウィーニングとは、なでしょうか?
人工呼吸からはずす操作を「ウィーニング」と呼ぶ。日本語では「人工呼吸からの離脱」とも呼ぶが、「離脱」にはウィーニングのもつ“少しずつ”、“段階的”というニュアンスが乏しいので、むしろカタカナ語のまま使う場合が多い。
人工呼吸器が離脱可能か評価するために、自発呼吸へ移行させていく過程のことですね。


人工呼吸器のウィーニングには、SBT(自発呼吸トライアル)がよく使われます。
すぐにSBTができるわけではないので、まずはその前に必要なことを知りましょう!
人工呼吸器のウィーニングを始める前に
ウィーニングを始めるには、
呼吸が悪くなった原因(基礎疾患)が落ち着いていること、改善していること
これらが前提です!
人工呼吸器のウィーニングが開始できるか判断するには、以下の評価を行います。
- 酸素化
- 血行動態
- 意識レベル
- 電解質・酸塩基平衡
酸素化・血行動態
酸素化が落ち着いていることは大前提ですね。
また血圧が不安定なある中でウィーニングに向かうこともありません!

意識レベルの評価
人工呼吸器を使用中でトラブルが最も多い原因は、鎮静によって呼吸が抑制されることです。
ウィーニングを始める前には、鎮静薬の中断・休息し、意識レベルを評価を行います。

電解質補正
低リン血症、低マグネシウム血症、低カルシウム血症は、呼吸筋力を低下させます。
電解質を補充すると横隔膜収縮力が改善すると言われており、積極的に電解質は補正しましょう!

ウィーニングの開始
ウィーニングを開始するには、SBTの開始条件をクリアしておく必要があります。
SBTの開始条件は、以下の通りです。
1~5をすべてクリアした場合「SBT実施可能」
- 酸素化が十分である
□ FIO2≦0.5かつPEEP≦8cmH2Oのもとで SpO2>90%- 血行動態が安定している
□ 急性の心筋虚血、重篤な不整脈がない
□ 心拍数≦140bpm
□ 昇圧薬の使用について少量は許容する
(DOA≦5μg/kg/min DOB≦5μg/kg/min、 NAD≦0.05μg/kg/min)
- 十分な吸気努力がある
□ 1回換気量>5ml/kg
□ 分時換気量<15L/分
□ Rapid shallow breathing index (1分間の呼吸回数/1回換気量L)<105/min/L
□ 呼吸性アシドーシスがない(pH>7.25)
- 異常呼吸パターンを認めない
□ 呼吸補助筋の過剰な使用がない
□ シーソー呼吸(奇異性呼吸)がない- 全身状態が安定している
□ 発熱がない
□ 重篤な電解質異常がない
□ 重篤な貧血を認めない
□ 重篤な体液過剰を認めない
ウィーニングの進め方
ウィーニングの開始条件をクリアできるとSBT(自発呼吸トライアル)を開始することができます。
SBT(自発呼吸トライアル)は
FiO2 ≦ 0.4 , PEEP : 5cmH2O , PS : 5~7cmH2O
人工呼吸器の設定を上記にし、30~120分間で評価を行いましょう!
SBTの進め方
- 人工呼吸中と同じ酸素濃度とする(FiO2≦0.4)
- 設定:PEEP:5cmH2O+PS:5~7cmH2O
- まずは5分間観察する
ここで頻呼吸や努力呼吸など変化が見られることが多い - この期間はベッドサイドで患者の呼吸状態を頻繁に観察し、問題があればSBTの実施を中止する
- 問題がなければ本試験に移行する
30~120分間観察する - SBT成功基準を満たせば合格
ウィーニングがクリアできると抜管に向かうことができます。
ウィーニング中の観察ポイント
人工呼吸器のウィーニングを行う際には、
患者のバイタルサインや循環動態、意識状態、呼吸負荷の有無を観察します。
バイタルサインの観察項目
- 呼吸回数の上昇
- SpO2の低下
- 血圧の変動がないか
- 心拍数の変化
- 不整脈の有無
- 不穏や不安状態がないか
- 末梢の冷感の有無
- 冷汗の出現がないか
SBTが失敗するケースは、
SBT開始後30分間に呼吸回数・心拍数・血圧の上昇と動脈血酸素飽和度が低下する
と言われています。

呼吸負荷の有無のチェックポイント
- 異常な呼吸パターンの変化
- 異常呼吸(陥没呼吸、シーソー呼吸、鼻翼呼吸)がないか

ウィーニングの中止
ウィーニングを進めていく中で、SBT(自発呼吸トライアル)を実施しているときに
- バイタルサインの変化
- 意識状態の変化
- 循環不全
- 呼吸負荷の出現
上記の症状が出たらウィーニングを中断します。
SBTの成功基準
集中治療医学会示されているSBTの成功基準を以下の通りです。
STB成功基準
- 呼吸数<30回/分
- 開始前と比べて明らかな低下がない(たとえばSpO2≧94%、PaO2≧70mmHg)
- 心拍数<140bpm、新たな不整脈や心筋虚血の徴候を認めない
- 過度の血圧上昇を認めない
以下の呼吸促迫の徴候を認めない(SBT前の状態と比較する)
- 呼吸補助筋の過剰な使用がない
- シーソー呼吸(奇異性呼吸)
- 冷汗
- 重度の呼吸困難感、不安感、不穏状態がない
上記の基準を達成できない場合は、SBTを中断します。
SBTを中断したら、呼吸器条件は前の設定に戻し、翌日以降に再評価しましょう!
ウィーニングが進まない
SBTの成功率は、およそ8割程度であると言われています。
SBTに失敗する理由は、以下のものが考えられます。
呼吸負荷 |
・呼吸仕事量の増加:不適切な人工呼吸器設定 ・コンプライアンスの低下 ・気道、気管支の収縮 ・低後負荷の増大 |
心負荷 |
・既存の心機能障害 ・心機能障害につながる心仕事量の増加 |
神経筋 |
・呼吸中枢ドライブの低下:代謝性アルカローシス、人工呼吸中の鎮静薬 ・換気指令伝達の障害:呼吸器系の神経筋の障害 ・周辺機能障害:神経筋疾患、CIPNM |
神経心理学 |
せん妄、不安、うつ病 |
代謝 |
代謝障害、コルチコステロイド、高血糖 |
栄養 |
肥満、低栄養、VIDD |
人工呼吸器と患者の非同調が起こると、人工呼吸器期間が延長してしまいます。
非同調を起こさないために、人工呼吸器の設定の見直しや離脱過程をサポートする換気モードへの変更を日々検討していく必要があります。
ウィーニングから抜管
抜管に向かうためには、以下の状況が必要です。
- 咳嗽が十分にある
- 分泌物が多量でない
- 舌根の沈下がない
抜管後に自分で気道開通を確保するためには、分泌物を排出する反射と筋力が必要です。

再挿管のリスク
抜管後に「再挿管のリスクがない」とは言えません。
抜管時には、再挿管の準備をしておきましょう。
まとめ
人工呼吸器管理の中でも、ウィーニングは大切なポイントです。
- ウィーニング前の評価も大切
- SBT開始後、30分はバイタルサインに注意する
- ウィーニングの中止もあり得る
- 抜管後は再挿管に注意
ウィーニングを行う際には上記に注意して取り組みましょう!
もっと人工呼吸器ついて知りたいあなた。
>> 【人工呼吸器の仕組み】基本知識のまとめ“集中治療看護師”が詳しく解説
参考文献
看護roo!.“小児の人工呼吸器中の特徴と観察点は?”.https://www.kango-roo.com/learning/4601/(参照2021-01-27)
ラジオメーター株式会社.“ウィーニングとは?”https://www.acute-care.jp/ja-jp/document/bloodgas-museum/category01/weaning(参照2021-01-27)
日本集中治療医学会.“人工呼吸器離脱に関する3学会合同プロトコル公開”https://www.jsicm.org/publication/kokyuki_ridatsu1503.html(参照2021-01-27)
三浦規雅(2018)『重症小児患者ケア ガイドブック』道又元裕,総合医学社
道又元裕(2014)『新 人工呼吸ケアのすべてがわかる本』照林社
渡辺嘉之(2017)『重症患者ケア』総合医学社